サイトアイコン 黙考のしじま

妖精

妖精

 

彼女は何ものなのだらうか。

私がいつも疲労困憊の中にある時を狙って、

彼女は不意に私の眼前に現はれ、

私を蠱惑の世界へと連れ去った。

何よりも彼女は私を官能的な仕草で誘惑し、

何よりも彼女の透き通るような肌と

胸の張り具合に惹かれて

私はといふとその誘惑に素朴に溺れた。

何であらうか、

彼女は直ぐさま裸婦に姿を変えて、

私の唇に唇を重ねた。

私は彼女を撫で回し、そして、彼女の柔らかい胸を弄り、

さらには、太腿を撫で回した。

私が触れる度に彼女は喘いで、更に私を誘ふのだ。

彼女の秘めたるところは既に濡れてゐて、

更なる官能に溺れたいのか、

いつでも私を受け容れる準備は出来てゐたのだが、

私はといふと小賢しくも彼女焦らすのだ。

さうすると、彼女はその優しく透き通ったやよ肌の手で

私の秘めたるものを強く握り、

さうして色っぽく嗤った。

 

――あなたはまだ、子どもね。可愛い。

 

と、彼女が私の唇を嘗めながら囁いたのだ。

 

私は尚も貪るやうに彼女の肉体を求めて、

なり振り構はず彼女を愛撫した。

そのときに私は光りにAuroraのやうな襞を見たが、

すると彼女は笑ひ転げて、

私の秘めたるものを弄った。

さうして、有無を言はせず、

私のものを彼女に挿入し、

私の上へと覆ひ被さってきた。

さうして、布団はさらさらと衣擦れの音を立てながら、

更に、腰を振る彼女は、

更に喘ぎ声を上げながら、

私のことなど目もくれず、

独り、己の官能の愉悦に溺れてゐた。

 

――ああっ。

 

と一言喘ぐ度に、彼女はその姿の正体を次第に現はし、

真白き柔肌の妖精(ニンフ)へと変身を遂げたのだ。

 

私はといふと、何の事か理解出来ず、

しかし、官能が醸し出す愉悦に溺れて行くのだ。

 

――あっ。

 

彼女の其処はひくひくとひくついて、

私のものに吸ひ付き、

何やら官能的な香り、

その香りは私を惑はすに十分な香りなのであった。

その香りは私に纏はり付き漂ふ。

その香りにやられた私は、一気に絶頂を迎えて、射精した。

 

すると妖精はけらけらと嗤ひ、

しかし、顔を赤らめながら、痙攣してゐるやうにも見えたのだ。

 

彼女は私の子どもが欲しかったのか。

それとも単に誑かしたかっただけなのか。

然し乍ら、疲労困憊の私は彼女との性交で力が漲る。

しかし、そんなことなどどうでもよく、

眼前に横たはる彼女は、次第に真白き柔和な球体に変化し、

そして、何処にか消えた。

 

これ以来、彼女はたまに私の眼前に現はれては、私の精液を吸ひ取って

そして、姿を消すのだ。

私はといふと何事もないやうに日常を過ごし、

疲労困憊に陥ると彼女の出現を待ち、

私は滾る。

 

――あああっ。

 

しかし、これが夢だと言ふ証拠がないだけで、

何時も官能的な香りを残す彼女が妖精だと言ふ証拠もないのだが、

こんな私に都合がいい女は此の世に存在する筈がなく、

私はこれは白昼夢でしかないと割り切って生活してゐるのだ。

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