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捕捉不可能なものを言葉で捉へたくて

捕捉不可能なものを言葉で捉へたくて

 

この何ものも言葉で捉へるといふ無謀な欲求は

言葉を知ってしまったものにとっては

度し難いものなのだらう。

その果てにジェームズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』があり、

造語に造語を重ねて、

言葉では捉へられぬものを捉へたくて、

唯のアルファベットの羅列に終はる

意味不明な言葉になってゐない書き物に終始してしまふ徒労の徒花が

残るだけなのかもしれぬ。

それでも言葉にならぬものを言葉で捉へたくて

揺れる言葉を思い切り揺らして

天網恢々疎にして漏らさずを言葉で実現しようと

藻掻くのだ。

心の動きに付いて行けない言葉は

その乖離し行く心を仕舞ひには鷲摑みにしてしまひ、

握り潰してしまふ短気は損気と知りながらも

自己破壊をしないことには憤怒は鎮まらぬのだ。

だが、心を握り潰す愚行は

最早癒ゑぬ疵になり一生その疵を引き摺る。

その疵はやがて膿み

血色とは違う色の液体がどろりどろりと流れ出しては、

その饒舌な膿んだ疵は

疎の天網の言葉では捉へられず

全ての饒舌な言葉は逃げ失せる。

ならば天網の目を細かくしてみても

相手は液体なのだ、

どろりと流れ出してさうして饒舌に言葉を発する。

細かい目の天網を何重にしても液体だから流れ出す。

ならば器を用意するのであるが、

どろりどろりと流れ続ける膿んだ液体は零れだして、

器では捉へられるのだ。

仮令、それが宇宙大の器でも

心の膿んだところから流れ出す液体は

それすらもいっぱいにし、さうして零れだすのだ。

詰まる所、此の宇宙は心の疵が膿んだ液体でいっぱいで、

森羅万象が全て膿んでゐる。

 

さて、此の宇宙で溺死したものはどれほどあるか。

それは死屍累累といふ言葉では語れぬ

那由他以上の数の死体で埋め尽くされてゐる。

つまり、無限なのだ。

果たして、言葉で無限は捉へられるのか。

さうした疑問が湧く前に既に吾は言葉で捉へるべく、

徒労をしてゐる。

多分、さうして夢の途中で命が尽きて吾は死の仲間に入り、

それでも言葉で捉へる無謀をせずにはをれぬのだらう。

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