――さて、《吾》は何処へとやって来たのだらうか?


辺りを見回しても《吾》の周りには何も《存在》せず。
そこで、《吾》は日陰に隠れて、
《吾》を島尾敏雄のやうな手捌きで《吾》自体を裏返してみては
《吾》を海鼠と同じ《存在》に変容したかのやうな錯覚の中、
――これは「夢」の中なのか?
と、独白しては、「えへら、えへら」と力ない嗤ひに《吾》なる《もの》を唾棄するのだ。


――何が堕ちて行くのだ! 《吾》は此処ぞ。そして、《吾》は確かに《存在》したのだ!


たが、《吾》から立ち上る白い影は精霊になり得ることを確信したやうに
断固として《吾》を投げ捨て、そして、《吾》を天日干しするのだ。
積 緋露雪

物書き。

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