睡眠薬を飲み、次第に微睡へと没入する《吾》の狼狽ぶりに嗤はざるを得ない《吾》とは、
一体、何なのだらうかと不意に疑問が湧き立つのであるが、
ままぁ、えいっと、それを放ったらかしにて、微睡に没入しゆく《吾》の瞼理に表象される《吾》為らざる《吾》の思考に、《吾》は暫く戯れるのだ。
さうしている内に眠りと言ふ名の深き海へと沈み込む《吾》は一息ふうっ息を吐いて、その深海に沈み込み完全な眠りにつく。
――へっへっへっ。それが本当の眠りかい? それは無理強いした眠りもどきの愚劣な《吾》隠しの逃げ口上でしかないぜ。
――何、それで構はぬのさ。土台、此の世で安らぎは得られるのだから。
――ではなぜ眠る?
――現実逃避がしたいだけさ。さうすることで「現存在」はやうやっと此の世に生き恥を晒して《存在》出来るのだ。