頭蓋内の闇を「五蘊場」と名付けた俺は、
其処に棲む「異形の吾」どもに対して破れかぶれの戦いを挑んで暫くするが、
それは敗退に敗退を重ね、
俺はもう五蘊場から追ひ出される寸前だ。


そもそも五蘊場に棲むものどもは何ものなのか。
きっとこの俺に関係したものと予想するのであるが、
その異形の様が何処をどう見てもこの俺とは全く似てゐないものどもで、
それは物の怪の類としか俺には認識出来ぬのだ。


つまり、それは、俺が物の怪の眷属か末裔と言ふ事を意味するのであるが、
しかし、この俺が物の怪だった事はこれまで一度もありはしない。


ただ、俺は人間である事を已められず、
その事を屈辱をもって受容してゐるのだけだ。


そんな俺の五蘊場に棲む仮象のものどもは既に俺の願望を負はされた
哀しい存在なのかもしれぬが、
それでも五蘊場に棲むものどもに対して俺は、
かう呟かざるを得ぬのだ。


――お前は誰だ。


さうするとすぐにこんな答へが五蘊場で木霊するのだ。


――お前だよ。


こんな嗤ひ話はありはしない。
にもかかはらず、この言明は俺にとっては致命傷で、
俺の胸奥をその言葉は剔抉するのだ。
さうしてそこからどくどくと流れ出す俺の血潮に俺は俺の未来を見てゐるのだ。


悲しい哉、果たする哉、五蘊場に棲むものどもは
全て歪曲された俺の異形に過ぎぬとも言へるが、
それを「異形」の一言で片付けることが可能なのか、
俺はそれに肯ふ事が出来ずに唯唯反抗するのだ。


つまり、徹底抗戦あるのみ。


ふん、しかし、其処から敗退に敗退を繰り返す俺は、
もう自嘲するしかないのだ。


――この馬鹿者が!


さうして今も俺の五蘊場で異形のものどもが大手を振って闊歩するのだ。


大月夜拉麺食らふ馬鹿らしさ


自嘲する吾の深みは底知れずその深淵に落下する吾とは
積 緋露雪

物書き。

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