この世界は
何とかそけきものなのだらう。


――あっ、


と、何かを見つけても
それが本当のものなのか
或ひは蜃気楼なのか
最早俺には区別が付かぬのだ。
さうして既にかそけき幻視の中に
埋没した俺は
其処にも見えるものを手に触れながら、
これが実物のものとしてこの世界に存在してゐるのか
単なる思ひ過ごしなのか
全く無分別になった事で、
全的に世界を受け容れられたのか。


絶えずかそけくある世界に対して
俺は反抗してみるのであったが、
俺を取り巻く幻視において、
俺は最早逃げ場なしの状態で、
へっ、つまり、お手上げなのだ。


このかそけき世界の金輪際に追ひ詰められた俺は
何と哀しい存在なのかと、嘆いたところで、
何にも変はりはしないのだ。
そんな事は疾ふの昔に知ってはゐたが、
実際に世界が幻視の中に埋没してしまふとなると
それは戸惑ひしか齎さないのだ。


何が哀しいのか、俺は独り泣きをしながら、
かそけき世界に後生をお願ひする馬鹿をする事で
このかそけき世界に生き残る場所を譲り受けるべく、
懇請するのだ。


或るひはこのかそけき世界と懇ろな関係になったのかと思ひなしたところで、
俺はこのかそけき世界に連れなくされて、
愕然とするのが関の山なのだ。


最早、俺はこのかそけき世界にかそけく自閉するに限るのか。
いづれにせよ、俺は肚を決めねば、また、腹を据ゑねばならぬのは間違ひない。


そして、へっ、俺はこのかそけき世界で生きる術を見出せるのか、
その最後までで見てやらうとくっと顔を上げるしかなかったのだ。
積 緋露雪

物書き。

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