かそけき気配が不意に飛び去る。
そんな時は視界が乳白色に変容してゆき
疲労困憊の中にゐる俺を発見する。


この疲弊の先にあるものは
多分に憂鬱なものでしかないのであるが、
生きる事を選択する以上、その憂鬱はやり過ごすしかない。


このぼんやりとした憂鬱はしかし、危険極まりなく、
気を抜けば俺を死へと誘ふのだ。


この綱渡りの有様に嫌気が指すと
最早俺は自死をするかもしれぬ。


つまり、俺は途轍もなく疲れたのだ。


その疲れた眼で見る世界は乳白色にぼやけてゐるとは言へ、
俺の事なんぞにかまけてゐる世界の未来へ向かって真っ直ぐに進んでゐる。
その世界に置いておかれた俺は、
独り愚痴を呟きながらも、
変容を已めない世界の様相に
俺の場所を確保する事に精一杯。


帆を張り大海原を失踪する帆船に焼き餅を焼きながら、
俺は沖太夫、つまり、信天翁(アホウドリ)に魂を載せて、
海上を疾走する幻想に多少の安らぎを覚えつつも、
それは俺が結局のところ幽体離脱する事に憧れてゐて、
俺は俺からの一時も早い離脱を望んでゐるのだ。


鳥に魂を託すのは死後でも十分で、
望めば鳥葬に亡骸を晒す事も可能。


しかし、今日は疲れた。
シオンの歌じゃないが、本当に疲れた。
積 緋露雪

物書き。

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