――ハクション


と、くさめをしてみたが、
誰かが私を噂してゐる筈もになく、
孤独をこよなく愛する私にあって、
くさめは、花粉症の始まりかも知れなかったのだが、
一つ、くさめをしたところで、そんな筈もになく、
やはり、私を噂してゐる他が此の世に存在してゐるのかも知れぬ。


しかし、くさめをしたのだから、私は背をぴんと伸ばさなければならぬのだ。
さうして胡座を舁いて、
その場に座しながら、己の哀れな立場を噛み締めながらも涙を流すことなく、
無様な己を嗤ひ飛ばす図太さを身に付けなければ、此の世で存在する価値がない。
泣いてゐる時間があれば、その分、更なる屈辱の中、
私は私を感じながら、その私を断固として拒否するべきなのだ。


――それで、お主は己の存在に堪へ得る術を見出したのか。仄かにお主から立ち上る霊性にお主の哀しみが表れてゐる。それで、お主はお主の存在の拠り所をくさめする己に託せるのか。それでお主はくさめする己の存在に嬉嬉として喜んでゐないだらうな。
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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