俺の振る舞ひに決定的に欠けてゐる礼儀は
ここぞと言ふ時には全的に大仰なその形式に則って
先ずは端座するべきなのだ。


例へば他人を前にして、
其処にあるぴんと張り詰めた緊迫感にしかと身を引き締めて対峙するには
端座することが他者に対する最大の礼儀なのだ。
それすら出来ぬと言ふのであれば、
俺は俺であるその根拠を失って
茫然自失の態で俺は俺の内部を罵倒するのみ。


端座せぬその居心地の悪さと言ったならば、
跋が悪いといふ言葉があるやうに
他者を前にした緊迫感に押し潰されるだけなのだ。
他者に呑まれる俺のその無様な様は、
端座することで、つまり、礼儀を守ることでやっと取り繕へる。


さうして俺が俺である自覚を持てる俺は、
端座して一礼し、他者に対して礼儀を尽くす。
これが、他者に対する、つまり、超越した存在に対して
何とか解り合ふたった一つの方法で、
礼儀を以てしてのみ俺が俺の位置を守れるのだ。
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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