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紊乱

秩序なき世界が想像できるとしたならば、
そいつは神をもまた創造できるに違ひない。
しかし、脳という構造をした頭蓋内の闇たる《五縕場》の記憶は、
しかし、自在に過去と現在をつなぎ合わせ、
また、近い将来を予想することで過去の記憶を持ち出し、
つまり、《五縕場》では因果律は既に紊乱してゐる。


いくつもの記憶の糸が輻輳し、または離散を繰り返しながら、
現在とは違ふ《五縕場》のみで辻褄が合ふ表象による世界が生み出される。
その現実と《五縕場》内に表象された世界の齟齬に苦虫を噛み潰すやうにして、
私はその狭間を行ったり来たりしながら揺れ続け、
さうして現在を測鉛してゐるのかも知れぬ。
現在を測ると言ふ無謀な思考実験を試みて、
さうして現実を見誤る誤謬をして、
それが現実だと何の根拠もない空元気のみで主張するしかないのだ。
しかし、現在に取り残されるばかりの私は、
更に《五縕場》を弄りながら現実らしい表象を現実に見立て、
尚も現実を敢へて誤謬するのだ。


それは言ふなれば態(わざ)とさうしてゐて、
私は何時までも現実を見たくなく、逃亡してゐるに過ぎぬのだ。
そして、そんなお遊戯をしてゐるうちに現実は渾沌に身を委ね、
現実はするりと私の思索の上をゆき、
想像以上のことがいつも現実では起こり得、
それにどんでん返しを喰らひ、それに面食らひつつも
私は「へっへっ」と力なく嗤ひ、
空を見上げるのだ。
そして、蒼穹には何処かぬらりとした感触のものが
明らかに存在するが如くに吾が身を抱くのだ。


その時、いつも気色悪い虫唾が走るのだ。
ならばと私もそのぬらりとしたものを抱きしめて、
さうして現実の感触を堪能するのだ。
それは何処まで行っても不快でしかなく、
その不快を以てのみ現実に対する無謀を繰り返しては、
いつも現実を取り逃がし、
また、現在に取り残されるのだ。
さうして私が取り残された現在は、
いつも紊乱してゐて、渾沌としたものとしてしか
私には把握出来ぬのだ。
これは私が数学が出来ぬからとかそんな問題ではなく、
私は現実を現はす言語を失った失語症の一種に違ひなく、
そんな私の胸奥には空漠としてた大穴に吹き抜ける風穴の音のみが
何時までも鳴り響いてゐる。

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