道なき道をふらつきながらも一歩一歩と進むその姿勢に酔ってゐるのか、
陶然とするおれは、悲劇のHero(ヒーロー)にでも為ったとでも思ってゐるやうで、
全く唾棄すべき醜悪な悪臭をプンプンと放ちながら、
此の世に実存してゐるその実存の仕方が全くお粗末なのだ。
それは自覚しながらもおれは、しかし、その醜態が居心地がいいのだ。


そんなぬるま湯に溺れながらも
泰然自若としてゐられぬならば、
生存する価値すらないのか。


緩やかに蒼穹を流れる白雲に押し潰されたやうに
ぐしゃりと潰れたおれの意識は、
そんなふらつく足取りのおれを見事に見捨てるのだ。


さて、意識が潰れた畸形のおれは、
勿論、軀体も同様に歪んでゐて、
その挙げ句、潰れた意識を忘却するべく、
おれは、道なき道をふらつきながらも一歩一歩進んでゐる。


さうやって己に酔ふ事でおれは潰れたおれからまんまと逃げ果せてゐるのだ。
それでも蒼穹には相変わらず白雲が流れ、
地平線は蒼穹の奥へと消えてゆき、
おれは自分の位置をすっかりと見失ったゐた。
積 緋露雪

物書き。

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