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ものの有様 三

 四次元を二次元に縮退させることで、現実の拡張を成し遂げた仮想現実は、その縮退にこそ現実の拡張にその秘訣が隠されてあるに違ひなく、といふのも、縮退によって二次元の平面世界が即座に四次元の仮想立体世界へとその有様を変化させることはお手のもので、その魔術の如き次元の操作はTouchpanelといふ平面上でやってのけてしまふことで、誰もがいとも簡単に仮想現実にのめり込んでしまふのである。
 それがどういふことかといふと、視覚上のことだから、いとも簡単に騙されるのである。それは敢へて言へば騙し絵に騙されてしまふ視覚能力しか持ち得ぬことを逆手にとってのことなのである。五感で世界に対峙する、つまり、私の場合は、時空間によってきりきりと締め付けられるやうな存在の居心地の悪さを絶えず感じるといふ感覚が私の存在証明の一つの要因と言へ、Touchpanelに対峙する私は、其処に現はれる仮想現実が、私以外の数多の他者が全く同じ仮想現実の世界を見てゐる、つまり、私は他者と同じ場所に存在してゐる仮想上の立ち位置が現実に上書きされるのである。それはまさに魔術の如きもので、誰しもがTouchpanelを前にするとそれがどこにゐようが同一の場所にあたかも存在してゐるといふ非現実的なことが現実として大手をふるって歩くのである。
 これは世界認識におけるParadigm変換と言える筈で、Smartphoneの画面を見てゐるといふことは同一世界を同一の位置で共有してしまふ、つまり、それは世界を情報化してしまふといふ身も蓋もない行為なのであるが、ありとあらゆるものを情報化して仮想現実にその厖大な情報を盛り込むことで、Smartphoneの画面上の世界は、世界自体の様相を一変させ、世界もまた、単なる情報としてとして現存在は受容するのである。そして、情報化された世界と現実の世界を繋ぎ、現実の世界に対して上書きすることで、現実世界は情報として溶け出し、Chaosが出現するのである。
 何故Chaosが出現するのかといふと、そもそも世界が情報としてのみ強調されてしまふと世界は、厖大な情報へと溶解をし始め、それはChaosでしかなく、しかし、それでは現実世界との接点がなくなるので、それを食い止めるために厖大な情報を呑み込める仮想現実の出現が必須であり、一度仮想現実が出現してしまへば、仮想現実は手を変え品を変えてその厖大な情報を丸呑みし、情報が多いほど、仮想現実は現実世界を上書きした時に使ひ勝手がよく、優れた仮想現実として万人に喜ばれるのである。そもそも仮想現実に情報過多といふことはあり得ず、仮想現実にどれほどの量の情報が盛り込めるかを競ひながら、仮想現実も数多ある中から現存在は取捨選択してゐるのが現状で、万人が必要に応じて膨大な量の情報の中からその都度適量の情報を取り出して仮想現実と付き合ってゐるのである。適量の情報量を確保するにはそれはそれは厖大な情報量が仮想現実に盛り込まれてゐなければならず、Big(ビッグ) data(データ)を持ち出すまでもなく、仮想現実は誰もがAccess(アクセス)するもので、仮想現実は貪婪な怪物の如く厖大な情報を時時刻刻と呑み込み更新しながら、仮想現実と現実世界を共に上書きしてゐるのである。

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