何度も何度も夢破れ
何度も何度も挫折を味はひ心が腐っても
それでも奥歯をぐっと噛み締めて顔を上げ前を見つめて
この屈辱に塗れた己を鼓舞するやうに
何度味のしない飯を喰らった事だらう。
それもこれも少しでも腹を満たして次なる闘ひに備へて
深く窪んだ眼窩の奥の瞳をギラつかせながら、
飢ゑた野良犬のやうに生に縋るべく何でもいいので獲物にありつくために、
年中唸り声を上げながらふらふらとほっつき歩いてゐたおれは、
当然、心中忸怩たる思ひを抱いて、時代錯誤の上昇志向に未だに囚はれてゐるとはいへ、
社会の底辺で藻掻き苦しみながら
全て善と徹底した現状の全肯定を拒絶し、
おれはおれの心に自ら絨毯爆撃をし、
おれの心に巣くふ弱虫を殲滅するのだ。
とはいへ、それで傷だらけになったおれの心からは
ドクドクと血が流れ出し、
その傷は一生癒える事なく、
心の痛みとしておれは背負はざるを得ぬのだ。
さうしておれの心は何時も疼き
その心はおれに問うのだ。
――もしやお前は本当の自分などといふまやかしを追ってはゐないだらうな。もしやお前は理想の自分といふまやかしを追ってはゐないだらうな。それが全ての過ちの原因だ。
おれは少なくとも本当の自分などといふ糞みたいなものや理想の自分などといふ余りに馬鹿げた己に対しての楽観過ぎる幻を重ね合はせることで自分を慰撫する事は拒絶し、
只管に眼窩の奥でギラつく瞳で冷酷な現実を冷徹に見者として見つめ、
その狂ひ咲きする現実の不合理に歯噛みしながらも
虎視眈眈と状況の反転のChanceチャンスを窺ってゐて
この最低の人生を諦めることなく、
最期は最高の人生だったと言ひたくて仕方がないのだ。
これを未練がましいと言へばそれまでだが、
まだ、おれは社会の底辺にありながら、
一発逆転の厚かましい夢を抱いているのだ。
でも、それでいいじゃないか。
それでおれが生き延びられるならば。
人生に正解などないのだから、
どう生きようが各人の勝手なのだ。
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪
Tags: 心痛む

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