何事も反復を繰り返してゐる内に綻びが生じ、
更に反復を繰り返すとその綻びは致命傷となり、
蟻の穴の一穴ではないが、
その綻びが呼び水となり、
巨大な壁は瓦解する。
それまで、しかし、私の形相は無傷で巨大な壁にぶち当たり続けることは不可能で、
とはいへ、ぼろぼろになりながらも巨大な壁に何度も何度もぶつかり続ける。
最早、巨大な壁をぶち破るのに私は肉弾戦を挑むしかない。
それが花開くことがなくとも、
何度も何度も巨大な壁にぶち当たり、
巨大な壁に跳ね返されながら、
小さな小さな小さな綻びが巨大な壁に生じるまで、
巨大な壁にぶつかり続ける。


巨大な壁に肉弾戦を挑む覚悟をした私は、
――ぐふっ
と、呻き声を漏らすほどの
巨大な壁からの圧力に対して負けない強靱な形相を
鍛へ上げてゐなければならぬ。
強靱な存在の鍛錬は、
形相と質料の両方を痛めつけて自己鍛錬しながら、
或ひはそれは 自己破壊と言ふ危険を秘めてはゐるが、
それをせぬ事には巨大な壁をぶち壊す萌芽すら生じない。


その無謀な反復運動は、しかし、やがて実を結ぶかどうかは解らぬが、
然し乍ら、玉砕覚悟の体当たりの反復運動は、
一縷の望みなのだ。
仮に玉砕覚悟の体当たりで巨大な壁に破調が表はれれば
それは僥倖で
さうなったならば、もう壁が瓦解するまでもう一息。
それまでの永劫に思へる長き長き長き時間に堪へ得る強靱な存在を
私は作り上げてゐなければならないのだ。
積 緋露雪

物書き。

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