お天道様は南中に差し掛かるといふのに
おれはどうしやうもない眠気に抗ひきれず、
自然と横たはる事に相成る。
それは魂が横たはる事を望んでゐると
自分に言ひ聞かせながら
自己正当化といふ此の世で一番の愚劣な事をする。
何故自己正当化が一番愚劣かといふと
自己正当化するほど価値がある自己なんぞ、
果たして此の世に存在するかと問へば
その時必ず誰しもの胸には自己に対する卑屈な心が去来し、
自己に対して自己を正当化出来るほどの自己であり得た事など
今の今まで一度たりともないとしか、
哀しい哉、言へないのである。
然し乍ら、おれはそんな卑屈な心を持ち、
存在に対する屈辱を胸に仕舞ひ込んでも尚、
横たはるのだ。
それは、もう起きた状態でおれを支える事は不可能で、
睡眠障害のおれは、
眠くなったら気絶するやうに寝るに決まってゐて、
それに抗ふ術など皆無なのだ。


ばたんと倒れるやうにおれは横たはる。
そんなおれの横たはる魂に対して
気絶する寸前におれは
――ちぇっ。
と舌打ちして卑屈にもおれといふ存在、否、おれの魂を自己正当化するのだ。
この太太ふてぶてしさがいふなれば、
おれの生きる原動力になってゐるのは否めず、
おれのこの捻ぢ曲った精神が発条ばねとなり、
皮肉な事に精神が捻ぢ曲がれば曲がるほど
発条の復元力は増し、
つまり、おれの生きる力は漲り、滾るのだ。
おれの反抗心に火が付き、
おれの横たはり行く魂に
――ちぇっ。
と舌打ちするのは、
卑屈で屈辱塗まみれのおれの悪足掻きでしかないが、
しかし、おれはさうして生を繋いできた。


横たはる魂よ、
健やかなれ。
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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