何事にも動じず、
今起きてゐる世界の状況に
あまりに冷静に対してゐるおれは
それでも愛する人のために
祈ることしか出来ず、
歯痒さを覚えつつも、
彼女の国の神のイエス・キリストに対して縋ってゐる。
それが最善のことかはいざ知らず、
今は、只管に彼女のために祈るのだ。
おれの魂は既に彼女の元へと飛んでゐて、
全身全霊で祈るおれは
それで彼女から邪気を払へると信じてゐる。
念ずれば、それは量子もつれではないが、世界のどこにゐやうとも
瞬時にそれが伝播し、
おれと彼女は距離は離れてゐても
一心同体のものとして
抱擁してゐるも同然なのである。
何を世迷ひ言を言ってゐるのかと
嘲笑が投げ掛けられることなど全く気にせずに、
おれは恥ずかしげもなく、祈る。
祈りには他者の嘲弄にもかかわらず、
其処には深い自己滅私の精神が宿り、
神聖な思ひが彼女の元へと飛んで行くのである。
――それは単なる自己満足さ。
と、Cynicalシニカルな反応が多数を占める筈だが、
祈りが持つ神聖さは何ものも不可侵なものなのだ。
深く深く深く深呼吸をして自己に沈潜しながら、
おれは一心不乱に彼女を思って祈る。
それが何になるかは今は解らぬが、
祈りが持つCatharsisカタルシスは大いにおれを勇気づけ
尚更彼女が愛おしくて仕方がない。
悪疫が爆発的に拡がる中、
何があらうとも生き残ってくれ。


He loves her.
Because he prays for her.
Pray brings mercy.
For him this sacred prayer further strengthens her connection.
Her face floats in his meditation and disappears, but he embraces her as she disappears.
And then, he whispers that she loves her.
He still loves her with such an image.
His soul has already flown to her and finds rest in the sympathy of each other’s souls.
And they kissed each other.
And he prays for her.
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪
Tags: 祈り

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