静寂を求めて私はRadioheadを聴く

閑さや岩にしみ入る蝉の声と芭蕉が詠んだやうに
この灼熱の中でちょっとした涼を求めるには
静寂との無謀な戦ひを挑んでゐるとしか思へぬ
Radioheadの音楽に溺れることで
静寂に沈む快楽に惑溺しながら、
心は涼む。
この人工的な現代の涼み方は
Asphaltアスファルトに蔽はれてしまった路上の上に
その亡骸を転がせてゐる油蝉のその行く末の無念を思ふと
つまり、直に土の上に転がれぬ無念は底知れぬもので、
土から離れてしまったこの人工的な世界では
死もまた、人工的な印象を強烈に残す。
そして、灼熱もまた、余りに人工的で、
唯、そんな世界の中で自然を保持してゐると思はれる人間の歌声を
デジタル化したもので聴くことで
涼を求める私は
この人工的な世界にある意味適応してゐるといふことで、
吾ながら苦笑せずにはをれぬ。
ならば、瘦せ我慢をしてでも
この人工的な世界の中で生き延びることには
何かしらの意味があるやなしや、
と、自問自答する。
新形コロナウイルスが蔓延る現代において、
それは人工的な世界への自然の反乱であると
腹を括って
受容する諦念にこそもしかしたならば真理と呼べるものが
隠されてゐるかもしれず、
と、そんなことを人工的な静寂の中において
つらつらと考へるのであった。


つまり、圧倒的に欠落してゐるのは
自然に対する皮膚感覚の触感で、
私は只管それを追い求めてゐるだけの
夢追ひ人の一人に過ぎぬのかもしれぬ。


――馬鹿が。
積 緋露雪

物書き。

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