どうしやうもない倦怠感の中で

何かをする気力が湧くことは全くなく
体軀は手枷足枷を付けたやうに途轍もなく重重しく
どうしやうもない倦怠感が魂魄に張り付く中で私は、
唯、横になり、その倦怠感が過ぎ去るのを只管待つといふ
余りに消極的な行為ででしか
このどうしやうもない倦怠感と付き合ふ術がなかった。
つまりはお手上げ状態なのであった。
この敗北は私を矮小化してのことなのかといへば
そんな事はなく、
土台私といふ存在はそんなものなのである。
この息絶え絶えの私に対して、しかし、吾は全く容赦がないのだ。
此処ぞとばかりに吾は私の捕獲作戦に取りかかってゐたのであった。
弱り目に祟り目で、
私は内部に吾といふ鬼子を抱へてゐたので、
このどうしやうもない倦怠感に苛まれてゐる私は
吾に対して無条件降伏をせざるを得なかった。
吾に捕獲された私は吾にまじまじと凝視され、
――へっ。
と、嘲笑されてそのまま捨て置かれたのであった。
さうして猛暑の中、日日弱ってゆく私。
その羸弱るいじゃくな私が気に喰はなかったのであらう、
吾は私を一瞥するなり、私を棄てたのだ。
そこには吾の深い幻滅が横たはってゐたかもしれぬが、
今でも超人を、私に超人を見たかった吾は
とんだ無駄足を踏んだのである。
ニーチェにかぶれてゐる吾は
何かを勘違ひしてゐて
この葦にも劣る羸弱な私が超人でなければならぬといふ
先入見に毒されてゐて、
いふなれば吾は私に対して癒やしがたい偏見の塊だったといふ訳なのであった。
積 緋露雪

物書き。

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