足を掬はれる
狡猾極まりない吾は隙あらば私の足を掬ひ、
私が素っ転ぶのを見ては
ざまあない、と嘲笑を浴びせる。
私が何をするにも吾は私の足を引っ張り
協働するといふ概念は吾にはないやうだ。
この私と吾の完全な乖離は
百害あって一利なしで、
最終的には私が吾をぶち殺すしかないのであるが、
何度吾を殺しても吾は甦り、
逆に私が常に足を掬はれる。
――何を今更戸惑ってゐるのか。吾の悪態は今に始まったことではないではないか。お前が幼き頃より内部に巣くふ吾はお前の足を掬っては高笑ひをしてゐた極悪人ぞよ。ヱヴァンゲリヲンの使徒のやうに「死」することはなく、何度お前がぶち殺したところで、吾は甦り、死すことはない。つまり、お前の肉体が滅んだとしてもお前の内部に巣くふ吾は未来永劫に亙って死ねぬのだ。吾とは此の世で最も哀れな存在ぞよ。足を掬はれることが何ぞよ。足を引っ張られることが何ぞよ。吾の絶望に比べたら塵芥に等しいではないか。