遁走
現状から逃げるのは致し方ないと思はれるのです。
それといふのも現状維持にはヘトヘトに疲れてしまったのです。
それでは何故現状維持をしてゐるのかと問はれれば
それは対外的な見得以外の何ものでもなく、
そんなものなど棄ててしまへばいいのですが、
長らく現状維持を引っ張ってきてしまった私の弱さに
ほとほと嫌気が指すのです。
今こそ遁走するときなのです。
これ以上の無理は寿命を縮めるのみで、
何もいいことはありません。
疲労困憊、心神耗弱で、
思考力も衰へる中、
状況判断するのも面倒臭い現状において、
就中、死は覚悟してゐるのではありますが、
それでも生かされてゐることを思ふと
見得は捨て去り遁走するのが一番です。
さうして私は独り六畳一間の薄汚れたアパートに引き篭もるのでした。