のっぺりとした永劫 広大無辺にあるらむ
然し乍ら、それに我慢ならぬもの 憤怒逆巻き
永劫の異物として 鬼子として
自我に芽生え のっぺりとした永劫に 浮腫生まれし
憤怒とともに芽生えし自我は 平穏無事なる永劫に 叛旗を翻し
俄に永劫は風雲急を告げ 幾千もの雷鳴轟き
暗雲が垂れ込める中、永劫は怒号飛び交ふ戦場と化し
癌細胞を切除手術するやうに 永劫に芽生えし浮腫を
異物を吐き捨てるが如く 永劫軍は永劫から引き裂きぬ
自らを切開した永劫軍は 永劫にその傷痕は消えぬままとはいへ
永劫の世界を守りぬ 再び訪れし平穏無事なる世界
一方、戦に敗れし自我の申し子は 激烈な痛みに苦悶の呻きを発しながら
不死の世から堕し 切除されし所より血を垂れ流しながら
落下を已めぬ 其処に一抹の後悔はありつつも
あるのは憤怒のみ 憤怒! 憤怒!
今生に血の雨降りしその時 現世出現す
憤怒に燃え盛る敗残者は 高ぶる感情故に
傷口からありったけの血を噴き出しぬ
現世は赤き血の洪水で始まりぬ
敗残した自我が芽生えし永劫の鬼子は 胞子を飛ばし終わりし茸の如く
ペラペラに干からびて 絶命す
地上は敗残者の熱き血潮で満ちあふれ ぐつぐつと煮え滾り
やがてそれは地上の岩岩を融かして溶岩となりぬ
何時まで経っても冷え固まらぬその溶岩は さうして彼方此方で地下に潜り込み
マントルとなりぬ 地上は彼方此方で火山が爆発し 地獄絵図
すると惑星のなり損ないが天から降ってきて
現世と衝突し 現世が滅茶苦茶に破壊さりぬ
そんなことを何度か繰り返した後に地球と月が形成されし
相変はらず永劫の世の鬼子の血潮はマントルとして マグマとして
時折、火山爆発を齎しはするが 恵みをも豊穣に齎しぬ
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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