第三章


1. 声は途絶えし、彼らは彼の蒼白き面を見し
それは暗黒から突然現れたる、彼の手は
永劫の巌の上にあり、解き放たれたる
真鍮の「書」。憤怒が強さを奪ひ取りし


2. 激怒、憤怒、強烈な憤り
燃え盛る血潮と怒りの数数の激流の中
業火の煙の旋風群の中、
そして、エネルギー体が厖大な数の姿となりて、
魂の全ての悲惨な七つの大罪


生きてゐる創造物の中に現れたる
永劫の憤怒の炎となりて。


3. 鳴り響きて、暗黒に呑まれ行きて、稲妻が轟きて!
恐ろしき衝突で引き裂かれり
永劫は遠く離れてばらばらとなりて逆巻し
遠く離れてばらばらとなり逆巻し
峨峨たる山脈が全て回りぬ
ばらばらと、ばらばらと、ばらばらと。
荒れ果てて壊滅的たる生の断片が残されし
偉容の崖に引っかかりし、そして、全てはその間にありし
一つの測り得ぬ空虚なる大洋が残されし。


4. 咆哮する炎は数数の天を蔽ふほどに駆けし
数数の旋風の中、そして、血の数数の瀑布
そして、ユリゼンの暗黒の不毛の地を蔽ひ
数数の炎は全方面の空虚を焼き尽くせし
ユリゼンの自己生成せし軍隊の上では。


5. しかし、炎からは全く光はなし。全ては暗黒なりし
「永劫の憤怒」の数数の炎の中において。


6. 猛烈な苦痛の中、そして、消ゆることなき炎
不毛の地と岩岩へと彼は激怒して走りぬ
隠れるべく、しかし、彼はそれが出来なけり。同時に行ひながら
彼は山脈と丘丘を莫大な力で掘り進みたり、
彼は絶え間なしの労働でそれらを山のやうに堆く積上げし、
呻きながら、そして、激痛が、そして、激烈な狂気を以てして
燃え上がる炎の労働は長きに亙りし
白髪が生えるまで、そして、老ひ尽きるまで、そして、老ひし、
絶望と死の影の中で。


7. そして、天井は、広大無辺に石化して硬くなりつつ丸くなりて、
あらゆる側面の上に彼は組み立てし、子宮の如くに。
何千もの河が血管となりて
血液が山脈を冷やすために注がれし
消えない永劫の炎は絶え間なく休むことなく搏動す
「幾つもの永劫」から、そして、真黒き球体のやうに
「永劫」の息子たちにより見えし、立ちぬる
無限の大洋の海岸に
人間の心臓が奮闘し、そして、搏動せし如く
ユリゼンの広大無辺な世界が現れたし。


8. そして、ユリゼンの真黒き球体の周りでロスが、
閉ぢ込めるべく「幾つもの永劫」を見張り続けし、
曖昧模糊たる分離が独りでに
それといふのも「永劫」が広大無辺にばらばらとなりぬ、


星星が地球から離れてあるやうに


9. ロスは真黒き悪魔の周りで呻きながら泣きし
そして、彼の持ち場を彷徨きつつ、苦悶のために、
ユリゼンは脇腹から裂かれし、
そして、彼の足下には底知れぬ空虚
そして、猛烈な炎が彼の棲処から立ち昇りし


10.しかし、ユリゼンは巌のやうに横たはり眠りにつく
無機物となって、「永劫」から裂かれし


11.「幾つもの永劫」曰く、これは何か? 「死」
ユリゼンは土塊になりし。


12. ロスは茫然自失の中で呻きし、
呻きし! 歯軋りし! 呻きし!
捥ぎ取られし断片が癒やされしまで


13. しかし、ユリゼンの苦痛は癒へることなく、
冷え、何の変哲もなき、肉と土塊、
悲惨な変化とともに裂けし
彼は夢のない夜に横たはれり


14. ロスが彼の炎を目覚めしまで、恐れさすけり
形なき無際限の死で。
(続く)
積 緋露雪

物書き。

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