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寂寞たる心象

夏至が近づいて日脚が長くなり

外部は燃ゆるやうな新緑の季節だが、

吾が心象はそれと反比例するやうに

寂寞たる景色が拡がってゐる。

その薄ら寒さといったら

朔風吹き荒ぶ真冬の如く凍て付いてゐる。

吐く息は白く、彼方此方で氷が張ってをり

葉を落とした木木は

寒さでかんと幹が割れる音を立てるが

その偉容を失はない。

それが雪化粧ならば少しはましかも知れぬが

余りに殺風景なのだ。

寒さに森羅万象は

己に蹲り、凍えてゐる。

その寂寞たる心象と外気の余りの違ひに

私は眩暈すら覚える。

最早私は平衡感覚を失ひ、

心象へと引き摺り込まれる外ないのか。

 

私は夏日なのにぶるぶると震へ出し

唇は紫色に変色する。

既に内部に蹲ってゐた私は

自ら内部の寂寞とした殺風景な心象に閉ぢ籠もったのだ。

真綿で首を絞められるやうに圧迫する外部の息苦しさよりも

内的自由を選んだ私は

凍えるのは必然として真夏日に寒さにぶるぶる震へてゐる。

汗を掻いてゐるのに寒くて仕方ないのだ。

それでも断然内部の方が居心地がいい。

これこそ私の悪癖であり、

外部の圧迫感から逃れるやうに

内部に引き篭もり、辺りを窺ってゐる。

さうすることでしか生き延びられなかった私は、

今日もそそくさと内部へと逃亡するのだ。

だから尚更私の心象は寂寞として殺風景なのだ。

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