闇は闇のままでゐ給へ

これ以上光にその身を曝してはならぬ

闇が一つ暴かれる毎に

吾らは逃げ場を失ふ

それは真綿で自分の首を絞めるやうなもので、

闇なくして人間は一時も生きられぬことを知るべきなのだ。

それを知らずに光に希望を見てしまったのが運の尽き。

光に希望を見た基督でさへ磔刑に処され

今以てロザリオで磔刑に処されてゐる。

闇は闇のままこれ以上Spotlightを当てられて暴かれるべきではない。

何にも気付かぬものが闇を闇のままにしておくのを嫌ひ

闇暴きをしてゐるが、

それは古代の人間の墓を暴く物珍しさにも似て

闇に対する畏れと戦きが全くなきに等しく、

暴いた闇に祟られてゐることも知らず、

認識領域が広がったと馬鹿騒ぎをしては

闇の祟りで斃れて行くのだ。

それをFrontierと呼んで

周りが囃し立てるから

闇暴きは止まらぬやうに見えるが

闇の逆襲が始まれば、

黙示録のHarmagedonなどといって

右往左往と逃げ惑ふのが関の山。

これ以上闇を暴いてはならぬ。

闇こそ浄土の謂なのだから。

積 緋露雪

物書き。

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