瞋恚 二
おれを抹殺したくて
手練手管を尽くし、
黙殺する人よ、
おれの心は否が応でも瞋恚で打ち震へる。
だからといって
おれは何の事はないと嘯いてはゐるが
おれの胸奥は瞋恚の炎で烈火の如く燃え盛る。
瞋恚はやがて雷に打たれ燃え盛る大木の如く
分厚く重重しい積乱雲が垂れ込めた闇間に
存在の象徴として命が尽きようとしてゐる存在として
神神しく輝くのであらうか。
すると突然、闇から巨大な手が出現し、
おれを引っ捕まへて
ぶんぶんと振り回すと、
虚空へ向けて投げ上げ
おれは無重量を味はふ。
果たしておれは飛んでゐるのか落下してゐるのか。
最早その区別は無駄なことと合点が行くと、
おれはただ、瞋恚の火の玉となって
おれをぶち破る。
それが地獄で為せる業なのかはどうでもよく、
最早瞋恚で燃え尽きかけたおれは、
おれのみを焼尽するのみ。
おれを抹殺するべく、
おれの存在の痕跡を抹消する人よ、
おれの瞋恚はおまえらを最早相手にせずに、
只管おれのみを標的に自虐の道を辿る。
おれの瞋恚は最早永劫の炎の如く
おれを焼尽するまで燃え続ける。