存在を裏返してみると、それは口から肛門までの消化器系と言ふ外部を内包してゐる存在の有様の不思議に先づ、目が行くと思ふが、そもそも存在はその芯のところに外部が占有してゐると言ふ内外逆転したある矛盾をそもそも論として内包してゐる。外部が存在の芯にあると言ふのは何だか台風の目付近では暴風雨が止んで晴れてゐるのを連想したくもなるが、つまり、それは何が言いたいかと言ふと、肉体はもしかするとカルマン渦を忠実に固着化したものと言へなくもないのである。熱は上へと上昇し、人間では熱は頭蓋骨へと絶えず上ってゐて、そのとき、上昇する熱は竜巻の如く渦を巻き上っていってゐるのかもしれず、その気道を確保するのに消化器系と言ふ外部が肉体の中心に居座ってゐると考へられなくもなく、さうして絶えず熱の補給を受ける頭蓋は、原子のレベルで絶えず熱エネルギーを受けってゐるから励起してをり、活性化してゐるとも言へる。それ故に、直立二足歩行は熱がまっすぐに頭蓋へと上って行くので、それで人間は脳ばかり図体よりもどでかい脳を持つ生き物へと変化したのかもしれぬのである。それはともかくとしてても、直立二足歩行が脳の巨大化に寄与したことは言ふに俟たず真実らしいが、熱力学の法則にもそれは適ってゐるといふ視点も棄てがたいのであるが、そこで、存在を裏返してみると、其処には無限大とも思へる巨大な宇宙全体を内包した存在を裏返した裏存在が忽然と現れるのである。

――さうして無限に取り憑かれた吾の魂魄は『ひっひっひっ』と嗤ひながら宇宙全体を揺するのである。果たして大山鳴動して鼠一匹なのか、それとも揺れる宇宙から宇宙の本質が暴かれるのか、裏存在と化した吾のみが摑まへることが可能なのだ。

積 緋露雪

物書き。

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