こんな時代だから自棄にならずに己がじし頑なであれ。

例へば蝸牛様に心が臆病になり、

ちょろりと目玉を出しては

渾沌と化した此の世の有り様に

びくりとしては直ぐに目玉を引っ込め、

いつまで経っても世界を把捉できぬ臆病心が顔を出したなら、

口を真一文字に結び頑なであれ。

さうして臆することなく

恐怖の世界を須く睥睨すべき。

さうしてこの世界を蔽ってゐる恐怖の本質を喝破するなり。

その時初めて人間といふ奇態な生き物の愚行が

見ゆるなり。

さうなれば、己がじし己の心の赴くままに

この世界を堂堂と闊歩するべきなりし。

 

然し乍ら、一切世界を単純化すること勿れ。

単純化こそが諸悪の根源なり。

世界は複雑でなければ

それは己がじしの誤謬なり。

積 緋露雪

物書き。

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