既に九月の初旬も超えると言ふのに

酷暑は一向に已みさうにない。

心はアイスクリームのやうにどろりと溶けて

私の肉体からポタポタと零れ落ちる。

私が歩く度にぽたりと落ちる私の心の雫は

地面に熔け入る前に日光に灼かれて蒸発する。

そして、全身から噴き出す汗。

これまた日光に灼かれて皮膚上で塩となり

その異常さが際立つ。

然し乍ら、

これからはこれが普通の夏だと言ひ聞かせるが、

体軀は断固としてこれを拒否する。

最早、体軀には限界なのだ。

とはいへ、それでも生きていかなければならぬ

この過酷な環境において

果たして私に何が出来ると言ふのか。

只管にこの酷暑を受苦して受苦して

生き延びる外ないのか。

風が吹いても

その体温より温度の高い熱風は

私を萎へさせる。

この異常高温は

地上に瘴気を降り注ぎ

さらにそれを発熱体として気温を上げると言ふ

そんな悪循環に陥ってゐるやうに

最早、地上を冷やす冷気はその力を失ひ

地軸の傾斜により引き起こされる

冬の強烈な寒気を待つ以外

地上が冷えると言ふ事象はないのかもしれぬ。

とはいへ、冬将軍も今では力を失ひ

北極の氷も減るばかり。

――茹で蛙!

そのやうにして私もこの酷暑に慣れるしかないのであらうか。

茹で蛙の最期は死が待ってゐるだけなのであるが、

夏の酷暑が今のところ、私の命を奪ふ一番の危険因子には違ひない。

 

とにかく、暑過ぎると思考が出来ずに

本にぼうっとするのみといふ時間が恨めしい。

積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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