目覚め行く秋と共に
夏の衰退の間隙を縫ふやうに
目覚め行く秋は
やがて世界を彩り鮮やかな景色へと変へるが
それと共に吾が心も彩り鮮やかになるかと問はれれば
――否!
としか言へず、
吾が心は冥い影に沈んでゆくのみであらう。
浅川マキのやうに黒尽くめの衣装で登壇するや
世界が浅川マキならではの独壇場へと豹変してしまふ
そんな魅力を持ち合はせてゐない吾は
唯の冥い影として此の地にへばり付いて
地を嘗めながら生を繋ぐ生き物へと変はりゆく。
粘菌の如き生命力もなく、
唯唯、地を嘗めながら時空間に囲繞されて
一所に留め置かれるしかない吾は、
さうなると最早彩り鮮やかな秋の世界は
焔に燃える地獄と何ら変はりがない。
世界が美しく色付くにつれ、
吾が身は地獄の焔に灼かれて
慟哭する外ない。
何故に吾は地獄の焔に灼かれるのかと問へば
それは吾が此の世に存在しちまってゐるからに過ぎぬ。
地獄の焔に灼かれることでのみ吾は生きてゐることを実感できる。
さうして吾の燃え殻が吾の冥い影として吾に纏はり付く。
そんな彩り鮮やかな秋が地獄を引き連れて目覚め行く。