苦悶の時間が始まりつ。

ぽっかりと心に空いた陥穽に

毎度の繰り返しで、

吸ひ込まれるやうに

落ちてしまふ吾が意識は

さうなったらどう足掻いても這ひ出られぬ。

這ひ出られぬから

意識にも重さがあると見え

その重さはこの時に一段と重くなり、

Melancholicに埋没した吾が意識は

更に深みを目指して落ち行くことになるのが常であったが、

心に空いた陥穽は底無しに決まってゐると高を括ってゐる吾は、

ぽっかりと、といふ言葉に

自棄に感心しながらない底を目指して落ち行く。

これのどこが哀しいかといふと

這ひ上がる気力さへ既に喪失してゐる吾が

浮遊する術を知らぬといふことなのだ。

吾は心のままに落ち行くのみなのだが、

ひと度Melancholicに陥った吾は、

落下こそすれ、浮揚することはないのである。

重たい頭は巌になったかのやうに重みを増して

激しい頭痛を伴ひながら

吾は吾に縮こまる。

さうするとゆっくりと陥穽に落ち行く吾が意識は

回転を始め、

Gyroscope現象から、

吾の意識は一定の方角に縛り付けられる。

回転を始めてしまった吾が意識は最早同じことしか

意識できぬことに相成り、

回転とは自縛するには最も簡便なる術なのだ。

何故の回転なのか、と問ふことはせずに

吾はなすがままにあれ、とばかりに

回転が回転を呼びながら落下してゆく吾に

断念をする。

さうすることで生き延びてきた吾は

今回も吾を断念する。

ぽっかりと空いた心の陥穽の口は

既に視界の外へと消え失せてゐるが、

何故かぽっかりと、といふ言葉にしがみ付く吾は、

心の陥穽の口が塞がり、

その拍子に陥穽から吐き出されるまで

吾は、閑かに閑かに陥穽の中を奥深く落ち行くばかり。

 

ある日忽然と心にぽっかりと空いた陥穽に

落ち行くばかりの吾は、

哀しい哉、当分、Melancholicに埋没して藻掻き苦悶する日日に

苛まれることになる。

積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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