絶望の行進
こっちの都合なんて全くお構ひなし。
今更参勤交代の時代でもなからうが
それが行進すれば、此方は平伏するばかり。
ちらりでもそれを見てしまったならば、
もう意識はそればかりにこだわり、
盲目になるばかり。
それだけそれは権威の象徴なのであった。
それの名は絶望。
それは何時も不意に来襲してきておれを蹂躙し尽くすのだ。
それは別に構はないのであるが、
ただ、哀しみをおれに残すのは堪へられぬのである。
――ほらほら、どけどけ。
と、おれの中ではそれはお通りするが、
このおれの中の可愛いHierarchy(ヒエラルキー)の頂点に君臨するそれは、
世界からすればおれのそれは塵芥の類ひに過ぎぬが、
しかし、おれにとってはそれは宇宙に匹敵する程の重さを持ってゐて、
何時でも思考の中心に坐すのだ。
しかし、おれはそれを崇めてゐるのかと言へば、
そんなことは全くなく、
それが粘着質なために、おれの心を掻き乱すに過ぎぬ。
しかし、一方で、おれは絶望することに溺れるのに快楽を見出してゐるのかも知れぬと思はないこともなかったが、
それはそれでいいと、突き放してゐるのだ。
絶望のそれに対して更なるそれを招き寄せる思考をする癖があるおれは、
雪だるま式にそれを巨大化させ、増殖させるのであるが、
それで、何かいいことがあったかと言へば、
おれが崩壊しただけたで、
何らいいことはなかったとも言へるが、
しかし、絶望の日日といふものは、
愛すべき日日でもある。
さあ、飛び出さう、
世界はおれの絶望なんてお構ひなしに存在するものだ。