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前歴史における世界開闢物語 五

一つ目の巨人はあらかたの使命を終へ
最後は永劫界諸共自らを足下の大渦に沈める事なり
一つ目の巨人は、
――うおっ。
と一叫びしつる
すると永劫界はシュルシュルと風船が萎むやうに
縮こまり、永劫界全体が一つ目の巨人諸共大渦に呑み込まれし。
これにて永劫界は此の世から消滅せし。
未来永劫、永劫界の復活はなし。
やがて、永劫界を丸ごと呑みし大渦は
劇薬を呑み込んだやうに不規則な伸縮膨脹を繰り返しながら、
苦悶の呻き声を発し、逆巻く渦は怒濤の渦を巻き始め、
大渦は更に更に伸長し巨大化するなり。
やがて、大渦は無限にまで巨大化するなり。
間延びした大渦は怒濤に逆巻く渦動力は最早なし。
緩やかな流れとなった大渦の名残には
無数の小さなカルマン渦が生じたり。
そして、永劫界が縮んで縮んで特異点へと変貌せし。
その時、永劫界は強烈至極な光を発せり。
漆黒の闇の大渦は、霧が晴れるやうに闇から光が充溢した世界へと変貌せり。
かうして光が生まれたなり。
光は永劫界の断末魔なり。
無限にまで間延びした大渦はやがて、ゆっくりと回転する時空へと変化するなり。
無限を手中にした大渦の名残は
更に更に膨脹を続け、
巨大化を已めず。
その巨大化は光速よりも速く膨脹し、
時空と光の充溢する時空には差異があり、
光の届かぬ時空では、然し乍ら、相も変わらずカルマン渦が次次と発生したり。
やがてカルマン渦群は、重力のために動き出し、
衝突を繰り返しては合従連衡を繰り返し、
中には巨大な巨大なカルマン渦へと成長するものも現れたり。
すると巨大な巨大なカルマン渦はきゅっと収縮し、
光が充溢する中、暗黒の時空を作りし。
そして、その周りでは、スターバーストが発生し、
数限りない星星が誕生したり。
つまり、暗黒の時空はブラックホールの卵なり。
かうして第五の時代が終はりぬ。
やうやく光射す中、暗鬱の状態から抜け出す兆候あり。


(続く)

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