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The Marriage of Heaven and Hell

The Marriage of Heaven and Hell 

『天国と地獄の婚姻』 by William Blake

            翻訳 積 緋露雪

 

要旨。

 

リントラが重重しき空気の中にて己の炎を轟轟と打ち震はせてをり、

飢ゑたる雲雲が深淵の上に垂れ込め

 

嘗ては柔和な、そして一本の危険な小路に、

まさしく正しき人間が死の谷に沿ってその道筋を進み行き。

棘が生えし処には薔薇が植ゑられてをり。

そして灌木の生えたる不毛な荒野に

蜜蜂が歌ひし。

 

それから危険な小道には草木が植ゑられ。

そして一筋の河、そして一つの泉

あらゆる断崖と墓の上に、

そして白骨の上には

赤土が生じし。

 

悪漢が楽なる道道を去る迄、

危険な道を歩く事を、そして

正しき人間が不毛な土地を邁進する事を。

 

今、頭を突き出した大蛇が蛇行す

柔和な謙遜の中を

そして正しき人間が獅子のうろつき回りし荒野で

憤怒せし。

 

リントラは重重しき空気の中にて己の炎を轟轟と打ち震はせてをり、

飢ゑたる雲雲が深淵の上に垂れ込め

 

 

或る新しき「天国」が始まり、そして、現在、基督降臨から三十三年なりし、

「永劫の地獄」が再興せり。そして、見よ! スウェーデンボルグが墓に坐りをりし天使になりつ。彼の著作は折りたたまれし麻布。今、エドムの支配下である、そして「楽園」にアダムが戻りし。イザヤ書三十四と三十五章を見給へ。

「相反するもの」がなければ進歩なし。「引力」と「斥力」、「理」と「活力」、「愛」と「憎悪」は、「人間」の存在に必須なりし。

それら反対するものが湧き出す泉から宗教においては「善」と「悪」と呼ばれるものが湧き出し。「善」は「理」に従ふ受動的なものなりし。「悪」は「活力」から湧き出し能動的ものなりし。

「善」は「天国」。「悪」は「地獄」。

 

「悪魔」の声

 

あらゆる聖書若しくは聖典。以下の「誤謬」の因なり。

  1. 「人間」こそ二通りの存在の原理がありし、即ち、「肉体」と「魂」。

「活力」こそ「悪」と呼ばれ、「肉体」からのみなり。そして、「理」こそ「善」と呼ばれ、「魂」のみからなり。

  1. 「神」こそ以下に書き記せし自身の「活力」のために「永劫」の地獄の刑罰に苦悶する「人間」であらう。

しかし、以下に綴られし「相反するもの」の数数は「真実」なり

  1. 五感によって関係する「魂」の一部である「肉体」と呼ばれしものに関して「人間」は自身の「魂」と区別される「肉体」を持たず、この時代が「魂」の主なる入口
  2. 「活力」は唯一生でありそして「肉体」から生じそして「理」は「活力」の限界若しくは「肉体」の外的な限界なり。
  3. 「活力」は「永劫」なる「喜び」なり

 

 

欲望を制限する人人は彼らのものが制限されるに十分弱い事より制限されし。そして制限するもの若しくは理性的なるものはそれに取って代わりし、そして不承不承に統治されし。

そして程度によってそれが制限される事は受動的なり、遂にそれが欲望の影にのみになりし。

この歴史は『失楽園』に書かれし。そして、「統治者」若しくは「理」は「救世主(メシア)」と呼ばれし。

そして本来の「大天使」若しくは天上の主が所有する軍隊の所有者は、「悪魔」若しくは「大悪魔」と呼ばれそして彼の子は「罪」と「死」と呼ばし。

しかし、「ヨブ記」の中では、ミルトンの「救世主」は「大悪魔」と呼ばれし。

何故ならこの歴史は両派により受け入れられし

それは「欲望」が投げ棄てられるかのやうに実際、「理」に対して現はれし。しかし、「悪魔」達の審判は「救世主」が倒れる事なり、そして「奈落」から救世主が盗みしものにより一つの天界を創りし

此の事は福音書に見られし、彼は団欒が若しくは「理」が「理想郷」を打ち建てし「欲望」が送られむ事を「父」に対して祈りし、聖書のエホヴァは将に彼ぞ、その彼は燃え立つ炎の中に棲みし。「基督の死」後を知るべし、彼はエホヴァになりし。

しかし、ミルトンにおいて、「父」は宿命であり、「息子」であり、五感の或る「比率」になりし。そして「精霊」、「虚無」!

注釈。理性的なるミルトンは、彼が「天使」と「神」について書きし時、媚び諂ひ書きし、そして「悪魔」と「地獄」については自由闊達で、それは彼がさうとは全く知らずに真実の「詩人」であり「悪魔」派故なり

 

記憶に残りし幻想

 

吾が地獄の炎の中を歩きし時、「霊」の愉悦で歓びし。「天使」にとっては劫罰で異常に見えるが、吾は彼らの幾つかの「諺」を集めし。その謂はれが或る国で使はれるやうに考へつつ、その文字に印をつけて、「地獄の諺」は以下のやうに、建物や衣服を描くよりもよい[地獄]の智の性質を示してをりし。

吾が家に帰りし時、五感の奈落の上に、或る平面が現実世界を覆ひつつ険しいしかめっ面をその両側にあしらへて、吾は見し、黒雲に囲われし或る強力な「悪魔」を、両側の巌の上を漂ひつつ侵食する炎と共に、彼は今、人間の感知出来る以下の文章で書き記す、そして、地の上でそれらを読みし。

 

 

あなたは、あらゆる「鳥」が将に天空を切り裂きつつ飛翔するのは如何様にしているのかを知りしか、

広大無辺なる歓びの世界はあなたの五感により閉ぢられしか?

 

地獄の諺

 

種蒔きの時に学び、収穫の時に教え、冬に歓べ

 

あなたの荷馬車と犂(すき)とを死の骨の上で駆り給へ。

やり過ぎる過剰をして辿りし道筋は智の王宮に導きし

 

思慮深さは無能により得られし裕福で醜悪な年老いた処女なり。

行動せずにのみ欲望するものは悪病を育む。

 

切られし蚯蚓(みみず)は犂を忘れじ。

水を愛せしものは河の中で堀るべし

 

莫迦者は賢者が見るやうに同じ木を見ない。

光なし面(おもて)を与へられしものは決して星に為れず。

永劫は時が創りし愛にある。

忙しき蜜蜂には哀しむ暇などなし。

愚なる時間は時計で計られし、しかし、智の時間は、時計では計れず。

 

あらゆる健康に良い食物は網や罠なしに捕へられし。

死の年に重さと秤の数字が齎されし。

 

如何なる鳥も高すぎる飛翔はせず。鳥が己の翼で飛翔する限り。

 

一柱の死体は、怪我を以て復讐せず。

 

もっとも高貴な行為はあなたの前の他人を座らせる事なり。

 

愚者が己の愚かさに固執するならば賢者にならむ

愚かさとは悪業の衣服なり。

 

羞恥は「矜持」の衣服なり。

 

収容所は「法」の石にて建てられし、昌家は「宗教」の煉瓦で。

孔雀の矜持は「神」の栄光なり。

山羊の肉欲は「神」の賜物なり。

獅子の激怒は「神」の智なり。

裸婦は「神」の作品なり。

 

哀しみの過剰が笑ひなり。歓びの過剰が咽び泣きなり。

獅子の咆哮、狼の遠吠へ、嵐の海の憤怒そして破壊する剣は人間の目には偉大過ぎる永遠の一部なり。

 

狐は己ではなく罠を非難す。

歓びは受胎せし。「哀しみ」は産まれし。

 

男は獅子の凶暴を着用し、女は羊の毛を纏へ。

 

鳥には巣を、蜘蛛には蜘蛛の巣を、人間には友愛を。

 

己を嗤う愚。そして無愛想でしかめっ面をした愚。どちらも賢いと考らむ、それらが鞭打たれるようとも。

 

現在証明されしものは嘗て、想像するのみもの。

鼠、二十日鼠、狐、兎は、根を見守りし、獅子、虎、馬、象は、果実を見守りし。

 

水槽は含有す、泉は湧出す

一つの思考は、無限に満つる。

絶えずあなたの心を語る準備をせよ、さすれば或る下卑たものはあなたを避けよう。

 

信じられしあらゆるものは真実の表象なり。

 

鷲はそのやうに多くの時を無駄にせず。鷲が群れの教えに屈服する時。

 

狐は己のために備へる。しかし、「神」は獅子のために備へる。

朝に考へよ、正午に行動せよ、晩に食べよ、夜に寝よ。

あなたに課されしものを蒙る彼はあなたを知る。

犂が言葉に連なるやうに「神」は祈る人に報いし。

 

憤怒の虎は馴致されし馬よりも賢し。

 

動かぬ水より毒を予期せよ。

 

あなたは十分以上のものが何かを知らずば、十分なるものを知らぬ。

愚者の咎めるのを聞き給へ! それは王の題なり。

 

炎の目、空気の鼻孔、水の口、地の髭。

 

勇気に弱い事は、狡猾な強さになる。

林檎の木は橅にどのように成長するのかを尋ねず、同様に獅子も馬に餌をどのやうに獲得するかを。

感謝に満ちし受領者は豊かな稔を生む。

 

仮に他者が愚かでなければ、吾等が愚かなり。

美麗なる歓びの魂は決して穢れぬ。

 

汝が高を見し時汝は霊の一部を見し。汝の頭を上げよ!

芋虫が自身の卵を産み付けし時に最も美しき葉を選びしやうに、祭司は最も美しき歓びの上に呪ひを置きし。

 

可憐な花を作りし事は時代の労役なり。

 

この野郎。気を引き締めろ。安寧に祝福あれ。

 

最も上級な葡萄酒は最も古いものなり、最も良き水は最も新鮮なものなり。

祈る人は犂を引くまじ。賛美は収穫するまじ。

歓びは笑うまじ。哀しみは咽び泣くまじ。

 

頭は崇高。心臓は悲哀。生殖は美。手と足は釣合ひ。

鳥における空気のやうに若しくは魚における水のやうに、軽蔑すべきものにおける軽蔑なり。

烏はあらゆるものが黒なる事を望み、梟はあらゆるものが白なる事を望む。

 

充溢は美なり。

 

仮に獅子が狐に助言されれば、獅子は狡猾なりし。

 

「改善」は真っすぐな道を造りし、しかし、「改善」なき鉤状の道は、「天才」の道なり。乳母は欲望を押し留めしよりも、揺り籠の中で幼児を殺せ。

 

人間が自然でない処は不毛なり。

 

真実は理解されるやうに決して離せず、そして、信ずられず。

 

十分! 多すぎだ

 

 

古の詩人は「神」若しくは「霊」のやうに感得出来る全てに命を吹き込みし、それらは名で呼ばれそしてそれらを木、河、山脈、湖、都市、国、そしてそれら広大無辺で数多ある、感覚が感得出来るものの特性を古の詩人は崇拝す。

そして特に詩人たちは各各の都市と国の霊について研究せし、それを精神の神神と為し。

或る体系が形作られるまで、体系は木木などの物体から精神の神神として実体化若しくは抽象化する事を企てる事で世俗化したものを利用し若しくは隷属化す、かやうに司祭が始まりし。

詩的な話から礼拝の型が選びつつ。

そして遂に詩人たちは「神神」がかやうなものを秩序づけせしと語りし。

かくして人間は人間の胸にあらゆる神神があるのを忘れし。

 

記憶に残りし幻

 

預言者のイザヤとエゼキエルは吾と共に食事をし、そして吾は彼ら預言者に尋ねし、

如何に彼ら預言者は敢へて徹底的に言挙げしたのかを。「神」が彼ら預言者に話されし事を、そして彼ら預言者が誤謬してゐるのか、若しくは騙す事の因になりしかとその時に考へなかったのかどうかを。

イザヤが答へし。吾は如何なる「神」にも出会はず。また、何も聞かず、有限なる有機的な感覚においては、しかし吾が感覚はあらゆるものに無限を見出しぬ、そしてかやうに吾はその時に説得されし。そして確信として残りし、誠実な義憤の声は「神」の声なり、吾は結果がどうあらうとも書かずにはゐられなかった。

それから吾尋ねし、物事がかやうであり、かやうになるといふ堅固なる確信であるかと。

彼は答へし。あらゆる詩人はさうなりし事を信ずる、そして想像力の時代においてこの堅固なる確信は山脈をも動かす、しかし、多くのものは堅固なる確信の唯一つすらも受け容れられず。

エゼキエル曰く。東方の哲学者は人間の感覚が感得せし第一原理を教へし 幾つかの国国は根源の一つの原理として保持すそしてその外は他の原理として保持す、イスラエルの吾等は(あなた方が今はそれをさう呼んでゐる)「詩的なる霊性」が第一原理とあらゆるその他の派生しもの、その派生したものは、他の国国の「祭司」と「哲学者」達を吾等をして軽蔑させ、そしてあらゆる「神」は遂には証明されるに違ひなき予言と教へし。吾等において根源的なる事、それはかやうである、吾等が偉大な詩人たるダビデ王は余りに熱狂的に望み、あまりに感情的に祈願せし、かく言ひつつ、ダビデ王は敵を征服し王国を支配すと、吾等はそのやうに「神」を愛せし、かやうに吾等は周辺国からダビデの名で呪われ彼らは謀反を起こすと主張せられり、これらの意見から衆生はあらゆる国が遂にはユダヤの属国になると考へるやうになりし。

かやうにかれは言ひけり、あらゆる堅固な確信のやうに、過去はさうなりし、といふのも、あらゆる国はユダヤ人の法典を信じ、ユダヤの神を礼拝す、そしてより偉大なる支配者に為り得ることに関して

吾いくつかの驚きを以てこれを聞けり、そして吾自身の確信を告白すべきなり。夕食後吾はイザヤに彼の失われし作品と共に世界を好いているかと尋ねし、彼は如何なる等価価値をも失はれてをらずと言ひけり。エゼキエルもイザヤと同じだと言ひけり。

吾、また、何が彼を裸にし、三年間素足にしたのかを尋ねし。彼答へし、吾等の友、ギリシアのディオゲネスと同じくしたまでの事と。

吾は其処でエゼキエルに尋ねし。何故に糞を喰らひしかと、そしてかくも長く右側に横たわり、そして左側に横たわりしは何故か? 彼答へし。無限を知りし他の人びとに生じし欲望 これは北アメリカの民族が実践せり、そして彼は彼の霊性と意識に抵抗せしは最も誠実故にかと。唯、現在の安寧と満足のため為りしか?

 

 

世界が六千年の終はりに業火の炎で焼き尽くされるといふ古代の伝説は真実なり、吾は「地獄」より聞きしやうに。ここで、炎の剣を持てし「智天使」が命の木を守りしものを去らせるように命令したために、そして、彼がそのやうにし、そして、あらゆる創造物は焼き尽くされ、そして無限が現はれし。そして、一方で聖は現在、有限に堕落せし。

この意思は官能的な快楽の進歩を実現す。

しかし、人間が魂と全く違った肉体を持つといふ最初の考へは、消去すべきなり、吾がこの事をするだらう、浸食する地獄の理論を刷り込まれ、それは「地獄」では有益で薬になり、見かけの表面を溶かしながら、隠されてをりし永劫がその姿を現はし。

知覚の扉がきれいにされしならばあらゆるものはかやうに人間に現はれし、無限に。

遂に人間が彼の洞窟の狭い割れ目を通してあらゆるものを見るまで、何故なら人間は自身で閉ぢちし。

 

 

記憶に残りし幻

 

吾は「地獄の印刷所」にをりし、そして、時代から時代へと伝はる知識の法則が解かりし。

第一の部屋には「龍人」がをりし洞窟の入り口から塵を掃出しつつ、内部で、幾らかの「龍」が洞窟を掘りつつ。

第二の部屋には巌と洞窟でとぐろを巻く「大蛇」がをりし、そしてその他の大蛇が金銀や宝石で飾りつつ。

第三の部屋には空気の翼と羽を持ちし「鷹」がをりし、その「鷹」は洞窟の中での無限の因なり、巨大な断崖に宮殿を建てし人間に似た夥しき鷹がをりし。

第四の部屋には憤怒の炎を燃やせし「獅子」がをりしそして金属を熔かし生きた流体とせし。

第五の部屋には「名もなきもの」がをりし、そのもの膨張するものへ金属を投げ入れし。

それから第六の部屋を占めしし「人間」によってそのもの達を受け取り、幾冊もの本を得、図書館を整頓せし。

 

 

感覚的なる存在へと此の世を創りそして今は鎖に繋がれ生きし巨人達に、真実あり。その生の因と全ての行為の淵源は、鎖に繋がれてをりしが、羸弱さと馴致の心の狡猾さなり。それは反抗する力の源泉なり。諺によれば、勇気ある羸弱さは狡猾なる強さなり。

かやうに存在の一部は「多産」なり、その他は「貪婪」なり、貪婪なるものにとって、生み出すものは己の鎖に繋がるやうに見えし、しかし、それはさうではなし、部分部分を存在として取り上げるのみなりそして全体を幻想す。

しかし、海の如く貪婪なものが非常な歓喜で受け取らなければ、「多産」なるものは「多産」である事を已める。

誰かは言ふだらう、「神」のみ「多産」でないのか? 吾答へし、「神」のみ「行為」し「存在」す、存在群若しくは「人間」達が存在する中。

人間のそれら「多産」と「貪婪」の二派は何時も此の世に存在す、そして彼らは敵対者なり、彼らを和解させやうとする誰もが存在を破壊せし。

宗教がその二派を和解させようと努めし。

気付くべきなり。イエス・キリストは和解させようとは帰せず、彼らを分ける事に努めし、羊と山羊の譬へのやうに! そして彼曰く、吾「平和」ではなく一太刀の剣を齎せし。

「救世主(メシア)」若しくは「悪魔」若しくは「誘惑する悪魔」は礼儀正しい吾等の「力」なるノアの洪水以前の一人であると考へられし。

 

記憶に残りし幻

 

一人の天使が吾の処にやって来て言ひし。おお、哀れで莫迦な若者よ! おお、恐ろしき! おお、悲惨なる状態よ! 汝があらゆる永劫へと汝自身を準備せし灼熱の燃え上がれり地下牢に思ひ馳せよ、永劫へと汝はそのやうに行ひし。

吾曰く。多分、汝は吾に吾が永劫なる宿命を見せたいのだそして吾等はそれについて沈思黙考しそして汝の宿命か吾が宿命かのどちらかが最も望ましいかを解からせたいのだ。

かやうに彼は吾とともに馬小屋へ連れて通り過ぎそして教会を通り過ぎそして最後に粉挽き場へと至る教会の地下室へと降りし、そして洞窟へと来し。そのうねうねと曲がりし洞窟を降り、気が滅入る路を手探りで進みし遂には空虚な空の如き無際限な空虚が吾等の下に拡がりしそして吾等は木の根に摑まへられてをり、この無際限に引っかかりてありし、しかし、吾曰く、汝が喜ぶ為れば、吾等はこの空虚に身を委ねてもよろしかり、そしてここでもまた神の摂理が存するかを試すなり。吾の望みを汝は望みしか? しかし彼は答へし。おお、若き人よ、汝が思ひし事はせずこのまま吾等は暗黒が過ぎ去りし刹那に現はれり汝が宿命を見るらむ。

かやうに吾は彼と共に或る樫の木の捻じれし根に坐ってをりし。彼は奈落の底へ頭を向けし茸に宙ぶらりんの状態なり、

徐々に無限なる奈落の底が見えし、燃え上がる都市の煙の如き炎、吾等の下には遙か彼方に太陽があり、暗黒ながらしかし輝きし、太陽の周りには巨大な蜘蛛達が巡りし燃え上がる軌道があり、彼らの獲物の後を這ひつつ、彼らは無限の奈落を飛ぶと言ふより寧ろ泳ぎつ、死体から生まれし最も悍ましき動物の形をし。そして大気はそれに満ちし、そしてそれらで出来てゐるやうに見えし、それらは「悪魔」なり。そして気の「力」と呼ばれし、吾は今、吾の共に吾の永劫の運命どうか? と尋ねし。彼曰く、黒と白の蜘蛛の間

然し今、黒と白の蜘蛛の間から一つの雲が現われりそして炎は燃え上がり下全体の深淵なる漆黒の闇を巡るなり、それ故下の奈落は海の如く黒くなりそして恐ろしき音で轟きし、吾等の下は暗黒の嵐以外何も見えず、雲と波の間の東方を見る迄は、炎と渾然一体となった血の瀑布が、吾等からは多くの石を投げ入れる事もせずに醜悪なる大蛇が現はれてはそして再び鱗を纏ひし途轍もなく巨大で醜悪なる大蛇が沈みし。遂に東方に、三度ほどの距離に、ゆっくりと波の上を燃え立つ波頭が現はれつその波頭は緋色の炎の二つの球体を吾等が見出す迄黄金色の巌のやうに盛り上がりつつ。其処から海は煙の雲の中へと逃げつ、そして今吾等は見し、それはレビヤタン(巨大な海獣)の頭である事を。彼のものの額は虎のそれと同じやうに緑と紫の縞模様に分かれてをり、直ぐ様吾等は血の閃光と共に漆黒の深淵を血の色で染めし憤怒の泡が引っ掛かってゐる口と鰓を見し、吾等の法に向けてあらゆる霊的なる存在の怒りと共に進みし。

吾が友の天使は粉挽き場の彼の持ち場へと上りし、われは一人留まりし、そしてそれから最早何も見えず、しかし、吾はハープの伴奏で歌いしハープ弾きの歌声を聴きつつ月光によって吾が或る川の快適な堤に坐りし様を見出しつ。そして彼の主題は自身の意見を変えぬものは澱んでゐる水の如く、そして心に醜い爬虫類を育てしと。

しかし、吾は立ち上がり、粉挽き場の方を見し、そしてそこで吾は吾が天使を見つけたり、そして天使は私に驚きの質問をせし、吾はどのやうに逃げしか?

吾答へし。吾等が観たすべてのものは、あなたの形而上のお蔭でありし、なぜならあなたが逃げし、吾はハープを聞きながら月光によって吾が堤の上にゐるのが解かりし、しかし、今吾等は永劫の宿命を見し、あなたはあなたの宿命を見しか? 彼は私の申し出に笑ひし、しかし、吾は突然強制的に彼を腕で摑み、夜を通って西へと飛びし、遂に吾等は地上の影から昇華せし、それから吾は彼と共に太陽の中へと真っ直ぐに飛び込み、そして吾は此処で城濾器着物を着し、吾が手にはスウェーデンボルグの著作があり栄光の場から沈みし、そしてあらゆる惑星を通り過ぎ、遂に吾等が土星に来し時、此処で休み、それから空虚へと飛び込みし、土星と恒星の間で。

此処で吾曰く! 汝の宿命なりしや、この時空での、もしそれを時空と呼ばむなら、間もなく吾は馬小屋と教会を見し、そして、吾は彼を聖餐台へ連れて行きそして「聖書」を開きし、そして嗚呼! それは深き穴なり、吾の前のその天使に引っ張られて吾をしてその穴に降らせし、間もなくわれは七つの煉瓦造りの家を見し吾等は第一の家に入りし、中には多くの猿や狒狒(ひひ)など、その種属に属するあらゆるものが胴を鎖で繋がれ、互ひに歯を剝きそして引っ摑みてをりしが、鎖が短き故にそれは抑へられし、然しながら吾はそれらが時時巨大化し、そしてそれから弱きものが強きものに摑まへられ、にたり顔で初めは一組に為りそして貪り食らひし、初めに一つの四肢がそして別のものが引き千切りられ、遂には肉体は絶望的な胴が残されし。そしてこの後歯を剝き出し手にたり顔をしそしてそれに愛してゐるが如くに口付をしそれらもまた貪り喰らはれり、そして彼方此方で自身の尻尾から肉を美味しさうに引っこ抜くものを見つ、恐ろしい悪臭に吾等二人とも苛立たせ、吾等は粉挽き場へ行きし、そして吾はわが手に一柱の骸骨が齎されり、その骸骨は粉挽き場ではアリストテレスの「分析論」なりし。

そうして天使が言ひつ、汝の幻想が吾に騙しけり、そして汝は恥じるべし。

吾答へし、吾等は互ひに騙し合ひ、そして汝の作品が唯一「分析論」為る汝との会話は時間の無駄なり。

 

対立が本当の友情なり

 

天使達が唯一の賢さのやうに己自身について語るのに虚しさが付いて回るといふ事を吾は何時も見出しぬ、かやうに彼らは組織化されし理性から芽生えし自信たっぷりで横柄に物事を扱ひし、

かやうにスウェーデンボルグは彼が記したものが新しいと誇りし、しかし、それは既に出版されし本の「内容」と「索引」のみなり

一人の人間が見世物にするために一頭の猿を運びし、そして何故なら人間は猿よりちょっぴり賢いので、自惚れ、七人の人間よりずっと賢い事を彼の事を理解せし。スウェーデンボルグがさうであったやうに、協会の愚かさを見、そして偽善を露呈す、遂にかれは全ては宗教だと想像すそして彼自身蜘蛛の巣が永劫に壊れてしまった地上の唯一のものなり。

今、平明な事実を聞き給へ、スウェーデンボルグは何一つ新しい真実を書かざりし。

今、別のものも聞き給へ、かれは全ての古き愚劣を書きし。

そしてその理由を聞き給へ。彼は全てが宗教的なる天使と話し合ったなりしそして全て宗教を憎む「悪魔」とは話してをらず、何故なら彼は自惚れてゐた為に狭量なりし。

かやうにスウェーデンボルグの著作はあらゆる浅薄な意見の要約、そして更なる荘厳な分析なり、しかしそれ以上のものではなし。

今別の平明な事実がありし、機械に長けた人はスウェーデンボルグの著作と同等なパラケルススやヤコブ・ベームの著作から一万冊の書籍を生み出す。そしてダンテやシェイクスピアの著作から無限の書籍を。

しかし彼がこれを成し遂げし時、彼は彼の主人より優れてゐると知った事を言はさせない、何故なら彼は唯、陽光の中の蝋燭なりし故に。

 

記憶に残りし幻

 

かつて私は燃え上がる炎の中に「悪魔」を見し。彼は雲に坐り「天使」の前に立てり。そしてその「悪魔」はそれらの言葉を言ひし。

「神」の礼拝はありし。神の霊性に従ひ各各他人の中で光栄なる神の賜り物。そして最も人間を愛する事、偉大なる人を妬みそして中傷する人は「神」を憎むなり、何故なら他に「神」なし故なり。

これを聞きし「天使」は殆ど蒼くなりしが、彼自身を支配しつつ彼は黄色になりし、そして遂には淡い桃色にそして笑ひながらそしてそれから答へし、

汝、偶像崇拝者よ、そなたは「神は一つ」為らずや? 彼はイエス・キリストの中に見えぬや? そしてイエス・キリストはモーセの十戒に認可を与へずやそして他の全ての者は愚者で、罪人で、そして無に等しきものにあらずや?

「悪魔」が答へし、小麦を盛りしすり鉢と共に愚者を擂り潰せし。彼の愚かしさは未だに彼に打ちのめされぬや、仮にイエス・キリストが偉大なるものならば、汝は彼を最高の愛を以て彼を愛するべし、今、聞き給へ、如何にして彼がモーセの十戒を認めしかを、安息日に彼は嘲りしやそして安息日に「神」を嘲笑ひしや? 彼故に殺されし人人を殺すや? 不貞を働きし女から法を顔を背けしや? 彼を支持する為に他の労役を奪いしや? 彼がピラトの面前で守る事を怠りし時過誤の目撃者は堪へられしや? 彼の弟子の為に彼が祈りし時、そして弟子ら泊まらせる事を拒んだ事に反して彼ら拒んだ人人の足の埃を振り払ふやうにと彼が彼ら弟子に命じた時を熱望するや? 吾、汝に言ふ、モーセの十戒破らぬ徳は存在せず、イエスは全ての徳なりし、そして衝動より行動す、徳からではなく。

彼がさう語ったとき、私は手を伸ばして燃え上がる炎を抱き締めし「天使」を見しそして彼は焼き尽くされそして預言者エリヤが現はれし。

注釈。この「天使」は、今は「悪魔」に為りしが、私の特別な友人なり、吾等はその地獄の中で若しくは、世界が上手く運べば必ず生じし残忍なる感覚で「聖書」をお互ひに読みし、

吾はまた持ちつ、「地獄の聖書」を、それは、世界が望むもうが望まないかのどちらかにせよ持つことに為りし。

 

獅子の為の一つの法若しくは牡牛の圧政

 

 

「自由の歌」

 

  1. 「永劫の女性」が呻き声を挙げし! それは地上全てに行き渡り、
  2. アルビオンの海岸は病み沈黙す、アメリカの牧草地は羸弱なり!
  3. 「預言者の影」は湖の川の傍に沿ってぶるぶると震へそして大洋を越えて呟く! フランスは汝の地下牢を粉砕せよ、
  4. 黄金のスペインが古代ローマの防壁を爆破せよ、
  5. おお ローマよ 汝の鍵を奈落に投げ落とせ 永劫の落下へと、
  6. そして泣け!
  7. 彼女の震へる手には恐怖が漂ふ新たに生まれしものを、
  8. それら永劫の光の山脈の上に今大西洋によって遮られ、その新たに生まれし燃え上がる炎は綺羅星の如き王の前に立てり!
  9. 灰色の眉をした雪のやうな白髪そして雷(いかずち)の顔をし嫉妬の翼で奈落の上を波打し、
  10. 槍のやうな手を高高と燃え上がらせ留め金が外されし盾、燃え上がる頭の中から嫉妬の手が前へ伸び、そして漂ひつつある新たに産まれしものは星が煌めく夜にうろつきし。
  11. 炎が、炎が、落ちてし!
  12. 見上げよ! 見上げよ! おお ロンドン市民よ。汝の顔は拡がりし、おおユダヤ人よ、黄金を数えるのを已めよ、汝の油と葡萄酒は戻りし、おお アフリカ人よ! 黒きアフリカ人よ! (行き給へ。翼或る思想よ彼の顔を拡げよ。)
  13. 炎の四肢、燃え上がる髪は、西方の海に沈みゆく太陽の如き撃ちし。
  14. 永劫の眠りから目覚めると、白髪の四大の一つは逃げ去りし、
  15. 嫉妬の王が彼の翼を虚無の中でばたばたさせて猛然と降りてきし、彼の灰色の眉をした顧問官達、雷の戦士達、丸くなりし古参兵達、辺りには、兜そして盾と、輪戦闘馬車、象、軍旗、城、投石器そして岩、
  16. 落ち行き、猛然と、崩れし! 瓦礫で埋もれしアーソナの隠れ家。
  17. 崩壊の下のあらゆる夜、それからそれらの薄暗き消えゆく炎が陰鬱な王の周りに現はれし、
  18. 雷と炎が、荒れた荒野を彼の綺羅星の如き主人を導き彼は彼の十の命令を発布す、陰鬱な暗黒の奈落の上でギラギラと輝く瞳で凝視しながら、
  19. 彼の東方の雲に火の息子がをりし処、朝の彼女の黄金の胸を羽繕ふ間、
  20. 呪いが書かれし雲を拒みつつ、石の方を踏み潰して塵にし、夜の隠れ家から永劫の馬を解き放ち、泣きながら

 

皇帝はもうをらず! そして今、獅子と狼は已めし。

 

「合唱」

 

夜明けの真っ黒き烏の司祭は、最早、死のやうな暗黒の中で、しはがれた声で歓びの息子へ呪ひの言葉を記すまじ。または、彼の受け入れし同士、即ち彼は自由と呼ばれる、暴君は、境界を作らず屋根を建てず。または処女と呼ばれし蒼白き宗教の淫らな行為は、しかし行為せず、それを望まず!

 

何故なら生きとし生けるあらゆるものは聖なり

 

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