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鬩ぎ合ひ

鬩ぎ合ってゐるもの同士は

お互ひ鬩ぎ合ってゐるといふ自覚はないが、

それを鳥瞰するものが現れると

そのものによりどちらも一歩も退かぬ鬩ぎ合ひの様がよく見通せる。

だからといって

鳥瞰するものは黙したまま何にも語らぬ。

全ては成り行きに任せて

唯唯、鬩ぎ合ふもののそのの張り合ひを

にこにこと見てゐるだけなのだ。

それが嘗ての暗黙のRuleであった。

とのぶつかり合ひは

それは凄まじい剣幕で捲し立て

互ひを罵倒するのであるが、

そのときの頭はフル回転である筈だ。

我と我との張り合ひは

お互ひの存在を賭しての自己主張でしかないのであるが、

哀しい哉、さういふ時にこそ人間性は溢れ出てしまふもので、

鬩ぎ合ひに勝利したものほど惨めな存在はないのである。

それは罵詈雑言を相手に浴びせて

ぐうの音も出ないまでに相手を追ひ詰めるその冷酷さは恐怖である。

相手が参ったをせねば

相手が死ぬまで追ひ詰める

そんな非情な鬩ぎ合ひが彼方此方で巻き起こり、

SNSが現れてからといふもの

鳥瞰するものは全て霧散し

どちらかに加担し

これまた罵詈雑言を相手側に浴びせては

溜飲を卸してゐる始末。

さうして最初に鬩ぎ合ってゐたものは

最早その集団的な罵り合ひに着いて行けずに

いち早くその罵り合ひから抜け出し

いち早く冷静さを取り戻すのであるが、

一度火が付いた集団Hysteriaは最早誰も止める術がなく、

首謀者不在のまま

蜿蜒と罵詈雑言が飛び交ふ鬩ぎ合ひは続き、

そこに野次馬も加はって

雪達磨式に関わる人数は増へてすぐに炎上する。

さうして初めに鬩ぎ合ひを始めた繊細な心の持ち主は

その罵詈雑言の嵐に堪へられず

自ら命を絶つのだ。

さうして初めて鬩ぎ合ひに加はってゐた部外者たちは

事の重大さに気付き

吾に返るといふ愚行を繰り返す。

 

人間は頭に血が上る存在で

一度犯した罪は何度でも繰り返すといふことを

SNSは炙り出してゐる。

学ぶ存在どころか学ばぬ存在といふのが

人間の本質の一つではないかといふ疑念。

痛ましいのは自死したものたちだ。

気まずい宴の後に酒を呷っては

酔ひ痴れぬことには

世知辛い此の世に堪へられぬと

昼間から酔ひ痴れる。

さうして酔ひ心地の中

道路に寝転がっては

車に轢かれて彼の世行き。

 

命短し恋せよ乙女。

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