にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
PVアクセスランキング にほんブログ村
人気ブログランキングでフォロー
Clicky お問合せ

横書きと縦書きの表示切り替え

アハイニアの書 五

五章

 

1:アハイニアの悲しみに沈みし声

虚無の上にて泣きをりし。

そして、フューゾンの「木」の周りにて、

孤独な夜に遠く

彼女の声は聞こえし、しかし、彼女は形なく、

しかし、彼女の涙は雲から

その「木」の周りに永劫に落ちるなり

 

2:そして、その声は叫びに変はるなり、嗚呼、ユリゼン! 愛!

暁の花! 吾は非―虚無の縁で泣きぬ、その深遠の幅はいかほどか

アハイニアと汝の間の!

 

3:吾は深遠の縁に横たはれり、

吾は上の暗黒の雲を見し、

吾は暗黒の森と氾濫を見し、

吾が目には荒涼とした光景が飛び込みし!

 

4:泣きながら吾は岩岩を乗り越え歩む

穴穴を乗り越え、そして、死の谷を通り抜け

何故汝はアハイニアを酷く嫌ふのか

汝の輝かし存在から吾を投げ込むべく

「孤独」の「世界」のへと

 

5:吾は彼の腕に触れられず、

彼の膝で啼くことも出来ず、聞けず

彼の声と弓の音を、彼の瞳は見えず

そして歓べす、彼の跫音を聞けず、そして

吾が心はその愛らしき音で高鳴るのだ!

吾はその場に口付け出来ず

即ち彼の輝かしき足が踏みつけしところ

 

しかし、吾は峨峨の上を彷徨ふ

疑ひやうのない必然性を以てして。

 

6:吾が黄金の宮は何処や

吾が象牙の寝台は何処や

吾が朝のときの歓びは何処や

歌を歌ひし、吾が永劫の息子は何処や

 

7:輝しきユリゼン吾が王よ目覚めるべし!

山の歓びを生じるべし。

永劫の谷に至福を齎すべし、

 

8:吾が王よ朝に目覚めるべし!

アハイニアの歓びを抱きしべし

彼の両手を広げし広き胸で、

柔らかき露を含みし雨雲から

彼の収穫の上に驟雨を降らせしまで。

 

9:彼が吾が幸福の魂を

永劫の歓びの息子に与へしとき、

彼が命の娘たちを

吾が愛の部屋に連れ行くとき、

 

10:吾が寝台に至福の赤子を見つけとき。

吾が部屋で胸の乳房で乳を含ませば

永劫の種子で満ちし

おお! 永劫の誕生はアハイニアの周りで歌ひし

彼らの歓びの甘美の交換において。

 

11:成熟に伴ひ膨脹し、そして、膨れに膨れ

吾が体臭で臭ひし風を伴って破裂す。

吾が熟した無花果と石榴の実実は

汝の足下で無邪気な喜びにある

おお、ユリゼン、喜び歌へよ、

 

12:さうして種子で満ちし汝の膝を伴ひ

また、巨大な焔に満ちし汝の手を伴ひ汝は

暁の雲から前へと歩きし

躍動せし歓びの乙女たちの上で

投げ込まれし人間の魂の上で

永劫の智の種子を

 

13:甘美な曙光を

晩にアハイニアが戻る汝の寺院へと投げ掛けし

水滴が誕生へ向け目覚め

吾が母親の歓びは、至福の眠りにありつつ

 

14:しかし、今、孤独のものが峨峨、そして、山山を越えて

汝の愛する胸から放り出されし、

残酷なる嫉妬! 自己恐怖!

自己破壊、どれほど喜べるか、

暗黒の鎖を新生し給へ

野獣の骨がばら撒かれしところ

寒寒と雪を冠した山の上

誕生からの骨骨が埋められしところ

彼らが光を見る前に。

 

コメントを残す