空が枯れ葉のやうに落ちてくる世界は、
それだけ既に朽ち果ててゐる心臓の様相だ。
搏動が止まった心臓は既に肉塊へと変化し、
それは石へと変化を始める。
石になった心臓は只管意思を封殺し、
唯、私は烏だと宣ふのだ。


烏は虹へと変化しながら、
此の世は闇に包まれて、
Auroraが地面を這ふ。
蛇は空を飛び、龍の幼生となり、
天地は垂直線を地に突き刺し、それが林立する。


その垂直線に串刺しになった蛇は
鰻の如く蒲焼きにされ、
何ものかの餌になり、
龍は一向に此の世に現れぬのだ。


そこで蠅がぶうんと飛び立ち、
石となった心臓に止まり、
卵を産み付ける。
やがて蛆虫が石の心臓を食ひ潰し、
火山岩のやうに穴凹だらけなのだ。


それが再生の道程なのか、
蛆虫だらけの心臓は、
死者にとっては勲章なのだ。
しかしながら、蛆虫の繁殖により、浄化されし心臓は、
再び心の臓になるべく、地震を起こすのだ。
その痙攣した大地に媚びるが如く蛆虫だらけの心臓は、
蟻の巣の如く血管が輻輳し、
さうして生き残った心臓のみが
大地に接吻するのだ。


さうして再びAuroraが沸き立つ大地に
柴田南雄の合唱曲のやうな風音が
審美的になり響き、
烏は生き生きと鳴くのだ。


そして、私自身は麻疹に蔽はれし。
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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