到頭、金が底を尽き、
後、一月の間、飲まず食はずの生活を強ひられるが、
それでもおれは楽観的だ。
所詮、生活のことなど取るに足りぬ問題でしかなく、
そんな窮乏の状態にあってもおれは、
尚も問はざるを得ぬのだ。
その周りをぐるぐる回って
Waltz(ワルツ)を踊るやうに
どうも優雅な気分でゐる。
――いいか、よく聞け、其のものよ! おれはお前の尻尾は摑んだが、それでも俺はお前に問ふ! 其は何ものぞ!
そいつは不敵な嗤ひを残して姿を消した。
俺は霞を喰らってでもと言ふ思ひで、ぢっと待った。
途中、幻覚にも襲はれながらも、
ぢっとそいつが俺の息の根を止めに
再び姿を現はすのを待った。
案の定、そいつはおれがふらふらとなって
幽霊の如く彷徨ふ時を見計らって
ぎらりと光る大鎌を手にして現はれた。
その姿はCronus(クロノス)のやうでもあり、
死神のやうでもあったが、
そんなことなどどうでもよく、
唯、そいつはすっかりと窶れ弱った俺の首を刎ねるべく、
現はれたのだ。
――へっ、 望むところだ!
と見栄を張るおれではあるが、
無防備に素手でそいつに対しても
こてんぱんにやられ負けるて首を刎ねられるのは解り切った話で、
さうならぬためにはおれがそいつの首を刎ねるのみなのであるが、
果たせる哉、おれにはもうそんな力は残ってをらず、
――ええい、ままよ! どうにでもなれ!
と腹を括ったのであるが、
それがそいつの気を害したのか、
そいつはあかんべえをして
再び、おれの前から姿を消してしまった。
どうやら、まだ、おれは死ねぬやうだ。
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪

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