再びテロルが彼方此方で起きる世だから
尚のこと吾は顔を上げて歩み出す。
暗い暗い暗い世だから
尚のこと吾は嘆くことなく闇の中へと歩を進める。
それが、生きるものの姿勢だ。
ただし、それを正しいとはいはぬ。
正しいは人間の思ひ上がりに過ぎず、
正しいを決められるのは超人間か、神のみである。
況や正しいとはそもそも此の世に存在しないものでもある。
正しさを振り翳すものは欺瞞者であり、
その正しさの根拠は全く当てにならず、
独りで勝手に思ひ込んだ盲信の一つに過ぎぬ。
だから、正しさを振り翳すものは
――敵は殺せ。正義は吾らにある。
と簡単に叫び、簡単に人間が殺せるのだ。
その何処に正しさはあるといふのか。
まづ、敵と看做せる神経が知れない。
だからといって吾は友愛などといふ生温い理想など信じてやしない。
テロルが頻発する世では冷徹に現実を見なければならぬのだ。
その憂き世を歩くと不意にテロルに巻き込まれ絶命するやも知れぬが、
それでいいではないか。
一秒たりとも無駄にせずに精一杯生きてゐるのであるならば。


事態は急を要し、時は一刻を争ふ。
ならば、不意にテロルに巻き込まれようとも
人生満足と死んで行けばよいのだ。
怯んではならぬ。
だから吾はこの暗い暗い暗い憂き世を闊歩して行く。
それが人生といふものなのだ。
積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪
Tags: 姿勢

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