やがて夜の帳が落ちる頃、漸く目覚めつつも、未だに疲弊していた此の心身には睡眠不足は否めず、何かを貪り食って再び眠りに落ちたのだが、夢魔が夢世界を攪乱し、この意識なる不可思議な存在を《吾》と名指す以前に、夢魔は「私」らしい意識、つまり、自意識なる《もの》を追ふのである、その時、自意識は夢現の境に宙ぶらりんにありながら、余りの疲弊に意識は意識にのめり込むやうに潰滅を始める、そんな苦痛に意識は置かれると最早意識が屹立するには手遅れで、意識は無意識に溶け込む、さうして無意識に鬱勃と生滅する「私」の《異形の吾》は今も幽かに残っていた《吾》為る意識の断片を喰らっては、一息つくのである。


やがて、真夜中に目が覚める時、「私」の意識は、夢魔に喰ひ散らかされた《異形の吾》の残滓を後片付けする為に意識を総浚ひしてみて、夢の断片の粗探しするのであるが、最早夢にかつての神通力がなくなっていることを実感しつつ、それでも何か「意味」が転がってゐないかどうかを確認し、何にも《五蘊場》にないがらんどうを《内眼》で凝視するのであった。
積 緋露雪

物書き。

Share
Published by
積 緋露雪
Tags: 疲弊

Recent Posts

闇を纏ひし吾

闇を纏ひし吾   集…

2日 ago

思念の彼方には

思念の彼方には   …

1週間 ago

恋文のやうに

恋文のやうに   何…

3週間 ago

幻夢

水鏡に満月が宿り、 しずやかな…

1か月 ago

人は麵麭(ぱん)のみに生くるに非ず

不意に労働とは何なのかといふA…

1か月 ago

綴織

最高の綴織に出合った感動は 豈…

1か月 ago