吾が心はいつも狂瀾怒濤と言っていいだらう。

何をするにも憤怒に駆られ

この吾を囲繞する時空をぶち破り

口を水面でパクパクする金魚のやうに

金輪際出来ぬと諦めてゐる深呼吸をしたい。

絶えず時空に囲繞されてゐるだけで息苦しい吾は、

狂瀾怒濤の勢ひに任せて

この吾を囲繞する時空をぶち破ったら

吾は即死だらうが、

だから尚更この吾を囲繞する時空をぶち破りたい。

さうでなければ、吾が狂瀾怒濤は鎮まらず

この狂瀾怒濤に呑み込まれた吾が心は

溺死寸前の状態で

怒濤のなすがままに

かそけき呼吸すら出来ずに

何かの僥倖で狂瀾怒濤の中で

息継ぎが出来たとして

狂瀾怒濤の暴力には適はない。

――嗚呼。

と一息吐いて楽になりたくもあるが、

この呼吸困難な中でも

足掻くことは出来るだらう。

さうして今日も日が暮れる。

一向に鎮まらぬ狂瀾怒濤に翻弄されつつも

吾は何処まで行っても吾として

あり続ける吾を愛でたいが、

それが諸悪の根源と看做す吾は、

狂瀾怒濤に身を任せて

吾が心はちりぢりに切り刻まれ、

狂瀾怒濤に塗れて

結局、吾に縋る吾を棄てたいのだらう。

さうして今日も相も変はらず日が暮れる。

そして、吾が溺愛する夜の訪れだ。

積 緋露雪

物書き。

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積 緋露雪
Tags: 狂瀾怒濤

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