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THE [FIRST] BOOK OF URIZEN

THE [FIRST] BOOK OF URIZEN

 

ユリゼン[第一]の書

     ヰリアム・ブレイク著

     翻訳 積 緋露雪

 

ユリゼンの[第一]書における序

 

太古の「聖職者」の掌握せし権力あり

「幾つもの永劫」が彼の権力下の宗教を拒否した時、

一方で、北にある

曖昧模糊として、影のやうな、空虚な、孤独な

或る場所を彼に与へし。

 

吾が汝の歓喜の呼び声を聞くその「幾つもの永劫」は、

素早く飛び去る言葉を書き留め、そして、畏れず

汝、「幾つもの永劫」の劫罰の暗き幻影を明らかにする事を。

 

第一章

 

1.見給へ、恐怖の一つの影が生じる

「永劫」に! 「未知の」、「不毛な」!

自己閉塞せし、全的拒否せし、ところで「悪魔」は何を作りしか?

この忌はしき空虚に

この魂がぞっとする空虚に? ……或る者が言ひし

「其はユリゼン」、しかし、未知が、抽象的で

薄気味悪い秘密が、暗き力が隠れし。

 

2.倍倍に彼は分裂し、そして彼の九重に折り畳まれし暗黒の中にある空間により空間を測りし、

不可視の、未知の! 変化が現はれ、

彼の荒涼として峨峨たる山脈に憤怒を上げる

顫動せし黒き風により

 

3.彼は悲惨な戦ひの中で奮闘せし

様様な姿形をして不可視の鬩ぎ合ひにおいて

そして見限られたる野生性から生じし

野獣の、鳥の、魚の、大蛇の、そして四元の

動揺の、爆発の、蒸気の、そして雲の

 

4.しじまなる活動において転回する暗黒、

劫罰の苦悶の中で見えず、

一つの活動は未知でそして恐ろしき、

一つの自己凝視する影、

途轍もなき徒労に占められし中で

 

5.しかし、「幾つもの永劫」は彼の巨大な森を見し

幾時代に渡りて彼は横たわり、閉ぢ込めし、未知の

薄気味悪きものは深淵に閉ぢ込め、全ての空虚

ぞっと身震ひする忌まはしき渾沌

 

6.彼の薄ら寒き恐ろしき沈黙にある、暗黒のユリゼンは

準備せし、彼の一万もの稲妻は

陰鬱な厖大なるところに及び、彼は横たはる

恐ろしい世界を横切るやうに、そして、車輪群が回りながら

膨脹する海海の如く、彼の雲の中で轟く

雪を湛えた彼の丘丘に、彼の山山に

霰と氷を湛えた、恐怖の声声が、

聞こえし、秋の稲妻群のやうに、

雲が実りの畑を炎で燃え上がらせる時

 

第二章

 

  1. 地球はなかりし、引力を持つ球体もなかりし

不死のものの意思が膨脹せし

或ひは収縮せしは彼のあらゆる柔軟な思慮

死はなかりし、ところが、永劫不死の生命は湧き出したり

 

2.トランペットの響きで天は目覚めし、

そして、血の巨大な雲雲は逆巻く

ユリゼンのほの暗き岩岩の周りを、それは名付けられし

唯一の広大なものと

 

3.トランペットよ高らかに鳴り響け、そして、無数の「永劫」よ、

寒寒とした不毛の地の周りに集ひ給へ

今、雲雲と暗黒と水で満たされりそれは

錯綜する産みの苦しみが逆巻き、そして、

はっきりと言葉の数数を発す、突然の稲妻群は、

彼の山脈の頂上で渦を巻きし

 

4.暗黒の孤独の深きところとは異なり。

吾が聖なるところに残る永劫とは異なり、

吾が厳格なる忠言に隠匿されしものが際立ちて

未来の日日のために取っておきて、

吾は苦悩なき悦びを見し、

揺るぎなき堅固を

何故、汝、嗚呼、「幾つもの永劫」は死すなりけるか?

何故消えることなき炎は存続するなりけむか?

 

5.第一に吾は炎と戦ひけり、内部を焼尽せし、

世界の内奥深くを、

一つの空虚は広大無辺に、野生の暗黒と深淵

何もなきところ、「自然ども」が子宮で拡がりし

 

そして、自己でバランスを取りしものその空虚に手足を伸ばしけり

吾独り、さう、吾独り! 風風は残酷なまでに悲惨に

凝固せし、しかし、液化し、奔流となる

それらは堕ち、そして堕ちし、強き吾は跳ね返し

巨大な波を、そして、水の上に生まれし

堅牢な阻害物としての広大な世界が

 

6.金属で作られし本においてここに独りの吾は

智の秘密を書きし

暗き思索の秘密を

悲惨な戦ひや衝突によりて

「罪のものとして育った」恐ろしい怪物どもとともに

それらはあらゆるものの胸奥に巣くひし

魂の七つの救ひなき大罪

 

7.見よ! 吾は吾が暗黒を折りたたみし、そして、

この岩の上で、力強き手で

永劫の真鍮の「本」の執筆に取りかかりたる、

吾が孤独の中で書かれし其は

 

8.平和の、愛の、統一の法、

哀れみの、同情、許し。

各各がそれぞれ一つの棲処を選びたる

彼(か)の古代のものは無限の大邸宅にありし、

あるものは命じ、あるものは悦び、あるものは欲し、

あるものは呪ひ、あるものは重くし、あるものは測り、

あるものは王、あるものは「神」、あるものは「法」。

 

第三章

 

  • 声は途絶えし、彼らは彼の蒼白き面を見し

それは暗黒から突然現れたる、彼の手は

永劫の巌の上にあり、解き放たれたる

真鍮の「書」。憤怒が強さを奪ひ取りし

 

  • 激怒、憤怒、強烈な憤り

燃え盛る血潮と怒りの数数の激流の中

業火の煙の旋風群の中、

そして、エネルギー体が厖大な数の姿となりて、

魂の全ての悲惨な七つの大罪

 

生きてゐる創造物の中に現れたる

永劫の憤怒の炎となりて。

 

  • 鳴り響きて、暗黒に呑まれ行きて、稲妻が轟きて!

恐ろしき衝突で引き裂かれり

永劫は遠く離れてばらばらとなりて逆巻し

遠く離れてばらばらとなり逆巻し

峨峨たる山脈が全て回りぬ

ばらばらと、ばらばらと、ばらばらと。

荒れ果てて壊滅的たる生の断片が残されし

偉容の崖に引っかかりし、そして、全てはその間にありし

一つの測り得ぬ空虚なる大洋が残されし。

 

  • 咆哮する炎は数数の天を蔽ふほどに駆けし

数数の旋風の中、そして、血の数数の瀑布

そして、ユリゼンの暗黒の不毛の地を蔽ひ

数数の炎は全方面の空虚を焼き尽くせし

ユリゼンの自己生成せし軍隊の上では。

 

  • しかし、炎からは全く光はなし。全ては暗黒なりし

「永劫の憤怒」の数数の炎の中において。

 

  • 猛烈な苦痛の中、そして、消ゆることなき炎

不毛の地と岩岩へと彼は激怒して走りぬ

隠れるべく、しかし、彼はそれが出来なけり。同時に行ひながら

彼は山脈と丘丘を莫大な力で掘り進みたり、

彼は絶え間なしの労働でそれらを山のやうに堆く積上げし、

呻きながら、そして、激痛が、そして、激烈な狂気を以てして

燃え上がる炎の労働は長きに亙りし

白髪が生えるまで、そして、老ひ尽きるまで、そして、老ひし、

絶望と死の影の中で。

 

  • そして、天井は、広大無辺に石化して硬くなりつつ丸くなりて、

あらゆる側面の上に彼は組み立てし、子宮の如くに。

何千もの河が血管となりて

血液が山脈を冷やすために注がれし

消えない永劫の炎は絶え間なく休むことなく搏動す

「幾つもの永劫」から、そして、真黒き球体のやうに

「永劫」の息子たちにより見えし、立ちぬる

無限の大洋の海岸に

人間の心臓が奮闘し、そして、搏動せし如く

ユリゼンの広大無辺な世界が現れたし。

 

  • そして、ユリゼンの真黒き球体の周りでロスが、

閉ぢ込めるべく「幾つもの永劫」を見張り続けし、

曖昧模糊たる分離が独りでに

それといふのも「永劫」が広大無辺にばらばらとなりぬ、

 

星星が地球から離れてあるやうに

 

  • ロスは真黒き悪魔の周りで呻きながら泣きし

そして、彼の持ち場を彷徨きつつ、苦悶のために、

ユリゼンは脇腹から裂かれし、

そして、彼の足下には底知れぬ空虚

そして、猛烈な炎が彼の棲処から立ち昇りし

 

10.しかし、ユリゼンは巌のやうに横たはり眠りにつく

無機物となって、「永劫」から裂かれし

 

11.「幾つもの永劫」曰く、これは何か? 「死」

ユリゼンは土塊になりし。

 

  • ロスは茫然自失の中で呻きし、

呻きし! 歯軋りし! 呻きし!

捥ぎ取られし断片が癒やされしまで

 

  • しかし、ユリゼンの苦痛は癒へることなく、

冷え、何の変哲もなき、肉と土塊、

悲惨な変化とともに裂けし

彼は夢のない夜に横たはれり

 

  • ロスが彼の炎を目覚めしまで、恐れさすけり

形なき無際限の死で。

 

第四章[a]

 

  • ロスは驚愕に苛まれし

骨を戛戛と鳴らし怯えけり

 

  • そして、地獄の炎で

不死の狂った憤怒で震へ上がらせり

 

  • 旋風の数数の中に、そして、瀝青、そして、硝石が

ロスの憤怒の四肢の周りに

 

  • そして、ロスは網と罠を作りし

そして、辺りに網を投げたり

 

  • 彼は身震ひする恐怖の中監視せし

暗黒は変化し、そして、あらゆる変化を束縛されし

鉄と真鍮の留め金で

 

  • そして、これがユリゼンの変化でありぬ

 

第四章[b]

 

  • 幾星霜が経ちて彼は寝返りを打つなり!

巌のやうな眠りの時間が経ちて彼は寝返りを打つなり!

一つの真っ暗な荒涼とした光景が移り気で伸びをした如く

地震で地割れを起こし、暗くくすんだ炎を噴き出しつつ

年月を重ね不気味に年月は逆巻し

陰鬱な劫罰、暗黒の旋風群の中、彼の周りでは

永劫の「預言者」は咆哮せし

彼の鉄の鋲が尚も打ち続けられし

熔けし液体の鉄を注がれつつ、分かれながら

監視するにはぞっとするやうな夜。

 

  • そして、ユリゼンは(それは彼の永劫界での名)

彼の実り多き悦びは更に更に暗くなりぬ

暗黒の闇に秘匿されり、感情は高ぶりつつ

地獄の硫黄の流体には彼の幻影の数数が

永劫の「預言者」の下は暗黒の鞴を吹きし

そして、火箸を休みなく回しぬ、そして、鎚は

絶え間なく叩かれし、新たに新たに鎖を鍛錬し

その環を数へつつ。何時間も、何日も、そして、何年も

 

  • 繋がれし永劫の精神は巻き始めぬ

激怒の渦を、途絶えることなくくるくると

そして、硫黄の泡はどろりと迸りながら

固まりぬ、一つの湖、輝き、そして、透明に輝きながら

山脈の寒冷地帯では雪の如く真白く。

 

  • 忘却、黙狂、必然!

精神の鎖に雁字搦めとなりし、

お互ひ身を縮こませし氷の足枷の如し

分裂さりぬ、「永劫」から引き裂かれし、

ロスは彼の鉄の足枷を鍛錬す、

そして、溶鉱炉を温め、そして、注ぎぬ

どろどろに熔けた鉄とどろどろに熔けた真鍮を

 

  • 不死から解き放たれ不安に苛まれし

苦痛で大きく波打ち! 激しい苦痛! 忍耐を超え

頂点が毛むくじゃらの野生として閉ぢ込められるまで

一つの球体の中に、彼の知性の源泉。

 

  • 恐怖の悪夢を見るやうな微睡みの中、

地獄の鎖に繋がれり如し、

巨大な「背骨」が拷問に身悶えす

風風の上で、づきづきする痛みが走りぬる

肋骨を、彎曲せし巨大ながらんどうの如し

そして、硬い骨、凍り付きし

彼の悦びの神経細胞全てに亙て。

そして、第一の「時代」が過ぎし、

そして、暗鬱な深い悲しみの状態。

 

7.「背骨」に接合せし巨大ながらんどうから、

赤色をした恐怖が沈みし

丸い球体は熱く燃え盛りながら、深く

深く「深淵」へと沈み込みし、

喘ぎ、球体になりし、身震ひしながら

一万もの枝枝が芽を出しながら

彼の硬い骨の周りの。

そして、第二の「時代」が過ぎ去りし

そして、暗鬱な深い悲しみの状態。

 

8.痛ましい恐怖が逆巻く中、

彼の神経質な脳は枝枝の芽を出しぬ

彼の心臓の枝枝の周りの。

上部に二つの小さな球体

そして、二つの小さな洞窟が固定し

風から大切に隠しながら、

彼の「目」は深淵を見るなり、

そして、第三の「時代」は過ぎし

そして、暗鬱な悲しい状態。

 

  • 希望の激痛が始まりぬ、

重重しい痛みと闘ひ、奮闘す。

閉ぢし螺旋の中に二つの「耳」。

幻視する彼の球体の下から

勢いよく飛び出し石化せぬ、そして、身震ひさせるなり

それらが成長するにつれ。そして、第四の「時代」が過ぎし

そして、暗鬱な悲しい状態。

 

10.ぞっとするやうな苦悩に病んで、

風にしがみ付きつつ、

二つの鼻孔が深淵へ向かって曲がりぬ。

そして、第五の「時代」が過ぎし

そして、暗鬱な悲しい状態。

 

11.ぞっとするやうな苦悩に病んで、

彼の肋骨の内部に脹らますなり、

一つの渇望せし「飢ゑたがらんどう」、

それから彼の水路のやうな「喉」が生じるなり、

そして、赤き炎の如し「舌」

渇きの、そして、飢ゑのが現れし。

そして、第六の「時代」が過ぎし、

そして、暗鬱な悲しい状態。

 

12.湧いてくる憤怒、そして、激しい苦痛を押し殺し

彼は右「腕」を北へ投げ出し

彼の左「腕」は南に投げ出しぬ

ぞっとする深淵へ突き出しながら、

そして、彼の「足」は下の「奈落」を踏み付けぬ

身震ひし、そして、呻きながら、そして、暗鬱に。

かうして第七の「時代」が過ぎ去りし

そして、暗鬱の悲しい状態。

 

第五章

 

1.恐怖でロスは彼の仕事から飛び退きし、

彼の巨大な鎚は彼の手から落ちぬ、

彼の炎が睨み、そして、病気になりぬる、

煙の中に彼の強力な四肢が隠れぬ。

それに対して騒音の潰滅する大音響を伴って、

衝突音、そして、衝撃音、そして、軋む音を伴って

不死のものは彼の鎖に我慢し、

かやうにして恐ろしい眠りに囚はれり。

 

2.数多の「永劫」の全て、

智慧の、そして、生の喜び全て、

彼の周りに海の如く逆巻く、

彼の小さな球体を除いては

折り畳まれしものが広げられるほどに見えるといふ。

 

3.そして、彼の不死の生は

夢の如く消え去りぬ

 

4.ぞっと身震ひしながら、「永劫の預言者」は打ち叩きし

一撃を以てして、彼の北から南の領域まで

鞴と鎚は今は鎮まりけり

落ち着いたしじまに、預言者の声は

連れ去られり、凍て付いた孤独と暗黒の空虚に

「永劫の預言者」とユリゼンは口を閉ぢけり

 

5.時代の上に時代が重なり時代は横転せし

生から切り離され光は凍り付きし

見るも恐ろしい畸形の形に

ロスは炎を消すのを許しぬ

それから彼は怖い物見たさで背後を振り返りし

しかし、空間は存在によりて合体してをりぬ

彼の魂には恐怖が襲ひし。

 

6.ロスは死者へ弔ひを以てしてもう見えなくなってしまったものに対して嘆きぬ、

溜息で彼の下では地震が起きたり、

彼はユリゼンが恐ろしい暗黒になったのを見し、

彼の鎖に縛り付けられ、そして、「憐憫」が生じぬ、

 

7.ぞっとするやうな分裂にして分裂を繰り返し

それといふのも憐憫が魂を分裂せし

永劫に永劫が激痛を伴ひ重なりて

彼の懸崖に注ぎ落ちし瀑布の中には「生」

空虚は「神経繊維」にリンパをして縮こまりぬ

夜の胸奥では不可思議な広がりが

そして、血の丸い球が残りし

「空虚」の上で震へながら

かやうにして「永劫の預言者」は分裂せし

ユリゼンの死した幻視以前に

それといふのも移ろひやすい雲と暗黒の中

下では冬のやうな夜の中

ロスの「奈落」は底知れぬほどに伸びし

そして、見られし、今は曖昧模糊としていたとはいへ、目で

「幾つもの永劫」の、その光景は遠く離れり

分裂が現れし暗黒から。

拡大鏡が「数数の世界」を発見するが如く

空間の「奈落」の底なしの中で、

かやうにして「不死のものたち」の広がりし目は

ロスの暗黒の幻視を見し、

そして、生の血の球は震へながら。

 

8.生の血の球が打ち震へし

根が枝分かれしながら、

繊維状のもの、風に身悶へしながら、

血、乳、そして、涙の繊維束、

劇痛を伴ひ、永劫が永劫に重なり、

涙と叫びの長さで具現化してをり

一人の女性の打ち震へながら蒼白き形が

彼の死者やうな顔貌の前で揺れ動くなり

 

9.第一の女性の一瞥でぞっと身震ひせし

全ての「永劫」から、今、分裂せし

雪雲のやうに蒼白く

ロスの顔の前で揺れ動きながら

 

10.驚愕、畏れ、恐怖、驚嘆、

永劫の数多は石化せし、

第一の女性の形となりて、今、分裂するなり

彼らは彼女を「憐憫」と呼びし、そして、逃げりけり

 

11.「彼らの周りに強靱な垂れ幕をして、天幕を広げよ

「綱と杭をして『虚無』に縛り付け給へ

さうして『幾つもの永劫』が最早彼らを見ないやうに」

 

12.彼らは漆黒の垂れ幕を織り始めぬ

彼らは「虚無」の周りに柱の数数を立てし

金の鉤金で柱の数数に留めし

「幾つもの永劫」の無際限の労力をして

一つの織物を織りぬ、そして、それは「科学」と呼びし

 

第六章

 

1.しかし、ロスは女性を見し、そして、悲しむけり

彼は彼女を抱き締め、彼女は悲嘆に暮れ、彼女は拒みぬ

邪で残酷な悦びの中

彼女は彼の腕から逃げし、しかし、彼は追はぬけり

 

2.永劫は二人を見しとき身震ひし縮こまりし、

男性は彼に似せて生まれし、

彼自身の写し鏡の像のやうに。

 

3.一つの時が過ぎさりぬ、「幾つもの永劫」は

天幕を立て始めぬ、

エニサーモンが吐き気を催しとき、

彼女の子宮に「蛆虫」を感じけり。

 

4.しかし、助けなき中、それは「蛆虫」の如く横たはれり

波打つ子宮をして

存在を作るべく

 

5.昼の全てはその蛆虫は彼女の胸に横たはりぬ

夜の全ては彼女の子宮の中で

その蛆虫はそれが一匹の大蛇に成長せしまで横たはりぬ

悲痛なシューシューといふ音を立てつつ、毒とともに

エニサーモンの腰にとぐろを巻き、

 

6.エニサーモンの子宮でとぐろを巻きぬ

大蛇は鱗を脱皮しつつ成長せし

鋭い痛みを以てしてシューシューといふ音が

キーキーと軋むやうな不快な叫び声へと変はり始めぬ

数多の哀しみと暗鬱で刺すやうな陣痛の数数、

魚、鳥、そして、野獣の多くの形、

一人の「幼子」の形で生まれし

以前、蛆虫であった其処には。

 

7.「幾つもの永劫」は天幕を仕上げ終へし

彼らの陰鬱な幻像をして動揺しぬ

エニサーモンが呻き声を上げながら

一人の男の子供を光に対して産みし時

 

8.一つの金切り声が「永劫」を劈きぬ、

そして、麻痺せし発作、

「人間」の影の誕生時。

 

9.彼の堪へ性のない手段で地を掘りつつ、

ヒューヒューと唸り声を上げながら、凶暴な炎に包まれし「子供」が

エニサーモンから出現す。

 

10.「幾つもの永劫」は天幕を閉ざし

彼らは杭を打ち倒しけり、綱は

永劫の作業の間伸び切ってぴんと張りにけり

最早ロスは「永劫」を見るまじ

 

11.彼の手で彼は幼子を引っ摑みぬ

彼は彼を哀しみの泉で沐浴す

彼は彼をエニサーモンへと渡しぬ。

 

第七章

 

1.彼らは「子ども」をオークと名付けし、彼は成長す

エニサーモンの乳を与へられて

 

2.ロスは彼女を起こしぬ、おお、哀しみと痛み!

一つのぴんと伸びし腰帯が生じ

彼女の胸の周りに。噎び泣く中

彼は二人を繋ぐ腰帯を破りし

しかし、まだ別の腰帯が

彼女の胸にきつく巻かれし、噎び泣く中

再び彼はそれを破りぬ。再び

別の腰帯が繋がれし

腰帯は昼の間は形作られし、

夜の間は二人の間は引き裂かれぬ

 

3.それらは巌の上に落ちつつ

鉄の「鎖」へとなりし

お互ひ鎖の環と環で固く組み合はされし

 

4.彼らはオークを山の頂に連れ行きし。

おお、エニサーモンのなんと泣いたことか!

彼らは彼の若い四肢を巌に鎖で縛り付けし

「嫉妬の鎖」をして

ユリゼンの下は死のやうな影

 

5.死者は子どもの声を聞きし

そして、眠りから目覚め始めぬ

あらゆるものが。子どもの声を聞きし

そして、生の目覚めが始まりぬ

 

6.そして、飢ゑで渇望してゐるユリゼンは

「自然」の臭ひをひりひりと痛みを伴って感じけり

辺りで彼の隠れ処の数数を探査するなり

 

7.彼は一本の糸と一つの測鉛を形作りし

下方の「奈落」と分かつべく。

彼は分断の法則を作りし、

 

8.彼は重さを測る秤をつくりし、

彼は重き分銅を作りし、

彼は真鍮の象限儀を作りし、

彼は金のコンパスを作りし

そして、「奈落」を探査し始めぬ

そして、彼は果実の庭を作りし

 

9.しかし、ロスはエニサーモンの周りを囲みし

「預言」の炎をして

ユリゼンとオークの視野から隠すやうに

 

10.そして、彼女は巨大な一種族を産みし

 

第八章

 

1.ユリゼンは探査するなり、彼の隠れ処の数数を

山を、荒地を、そして、原野を、

炎で輝く一つの球体とともに彼は旅するなり

恐怖の旅、悩まされし

残酷な極悪非道な行為によりて、形態の数数

彼の孤独な山での生活の

 

2.そして、彼の世界は厖大な極悪非道の行為で満ちてゐるなり

争ひ、不信、媚び諂ひつつ

生の部分部分では、似姿の数数

一つの足の、然もなくば、一つの手の、然もなくば、一つの頭の

一つの心臓の、然もなくば一つの目の、それらは有害なもので溢れてをり

ぞっとするやうな恐怖! 血は悦びに血湧き肉踊りし

 

3.ユリゼンにとって見るもの殆どは暗鬱にさせし

彼の永劫の造化が現れるなり

山脈の上で哀しむ息子たちと娘たちとして

泣いてゐる! 泣き叫んでゐる! 最初にシリエルが現れり

彼自身の存在に吃驚せし

雲から生まれし男のやうに、そして、ユーサは

水から出現す、哀しみの中!

グロドゥナは呻きながら地深くを引き裂きぬ

何といふことか! 彼の天に無数の罅が入るなり

暑熱により干からびた地面の如し、それからフューゾンが

燃え盛る炎から出現す! 最初の起因となりしが、最後に生まれし。

全ての永劫の子供たちは作風の点で似てゐるなり

彼の娘は薬草と牛から

怪物たちから、そして、穴凹の蛆虫から生まれし。

 

4.暗黒の中に鎖されし彼は、彼の眷属を全て見し

そして、彼の魂は暗鬱となりし! 彼は呪ひし

息子たちと娘たちの両方を、それといふのも彼は知りし

肉も魂も保持できぬけり

一寸の間すら彼の鉄の法則を。

 

5.それといふのも彼は生が死の上に生きてゐたことを見し

屠殺場の「雄牛」は断末魔を上げし

冬野やうな扉には「犬」が

そして、彼は泣きぬる、そして、彼はそれを「憐憫」と呼びし

そして、彼の涙は風の上に溢れけり

 

6.冷たい彼は上空高く彷徨ひ歩くなり、彼らの市市の上を

泣きながら、そして、激しい痛み、そして、深い哀しみ!

そして、何処とはいはず哀しみの中、彷徨ひぬ

歳経た天の上を

一つの冷たき影が彼に付き従ひぬ

一つの蜘蛛の巣の如く、湿りて、冷たき、そして、曖昧模糊に

彼の哀しみの魂から引き出されつつ

地下牢の如し天は分かちつつ。

ユリゼンの歩一歩が

市市の上を歩くところ何処もが哀しみの中に。

 

7.一つの「蜘蛛の巣」が暗黒に寒さで、すっかり至る所を全て蔽ふまで

その苦悩させられし要素が伸びりけり

ユリゼンの魂の哀しみから

そして、その蜘蛛の巣は初期段階で未発達の一人の女性なり

何ものもその蜘蛛の巣を壊せぬなり、誰も炎の翼を持ってゐなかった故に。

 

8.さうして糸は捩れ、そして、結ばれし

編み目の数数は、人間の脳の如く捩れし

 

9.そして、誰もがそれを、「宗教の網」と呼びし

 

第九章

 

1.それからそれらの「数数の都市」の住人たちは

それらの「数数の神経繊維」が「骨髄」へ変はるのを感ずるけり

そして、硬い骨骨ができはじめぬ

そして、すぐさま数数の災厄と数数の苦悩、

ずきずきとした痛みの数数とずきずきとする痛みの数数と軋むやうな音の数数が

あらゆる海岸を通りて、弱まるまで

「数数の感覚」は内部へと一斉に縮こまりけり

伝染病を蔓延らせる暗黒の網の下では。

 

2.縮みし目を曇らせ

織られし偽善を理解できぬまで

しかし、それらの天には縞のある泥土が

狭まる理解力によりて齎されり

透明な空気に見えしものとして、その結果、それらの目は

人間の目の如く小さくなりき

そして、爬虫類の姿となりて互ひに縮こまり

七フィートの身長で彼らは残りし

 

3.六日間彼らは存在から縮まり行くなり

そして、七日目に彼らは停止するけり

そして、彼らは七日を病んだ希望で祝福するなり、

そして、彼らの永劫の生を忘れりけり

 

4.そして、彼らの三十の都市が分かたれし

人間の心臓の形において

最早、彼らは自在に昇れず

永劫の空虚の中で、しかし、彼らの狭い理解力によりて

地へと縛り付けられけり

彼らはある年月の期間生きし

それから一つの有害な肉体を委ねし

貪り喰らふ暗黒の顎へ

 

5.そして、彼らの子供たちは泣きし、そして、建てし

荒涼とした場所に墓墓を

そして、思慮深き法の数数を作りし、そして、それらを呼びし

「神」の永劫の法の数数と

 

6.そして、残されし三十の都市は

潮の洪水に囲まれし、今呼ばれし

アフリカと、その名は当時エジプトでありぬ

 

7.ユリゼンの残されし息子たちは

彼らの兄弟がお互いに縮こまるのを見し

ユリゼンの「網」の下で、

信仰は空虚なり、

それといふのも住人たち地の耳は

衰へさせられ、そして、聞こえなくなり、そして、冷たくなりけり、

そして、彼らの目は認識出来ぬ、

彼らの他の都市の仲間たちを。

 

8.お互ひあらゆるものはそれ故にフューゾンと呼ばれし

ユリゼンの残されし子どもたちは、

そして、彼らはぶらりと垂れ下がりし地球に残されし

彼らはそれをエジプトと呼びし、そして、それは残りぬ。

 

9.そして、塩水の大洋が球体となりてうねり渦巻きぬ

 

ユリゼンの[第一の]書は終はりぬ

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