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ヘンリー六世 第一部 第一場~第二場

1623年の二つ折り半のフォリオ本から

 

最も高貴で比類なき仲間の

ヰリアムへ、

ペンブローク伯、など、最も素晴らしい国王の威厳に対するチャンバラン主教、そして

フィリップ

モンゴメリー伯、など、王の威厳に満ちた微睡みの紳士、ガーターに最も高貴に従う騎士群と、吾らの並外れて善き卿たちともども

 

正しく称ふべき――

 

吾らは汝の文学と表現から多くの賛意を受け取りたることに対して吾らが格別の感謝をもって探究しながらも、吾らは畏れがあり向かふ見ずであり得る二つの最も多様な物事を混交することで悪運に見舞はれたり。進取の気性に潜む向かふ見ずが、そして成功に潜む畏れが。汝が高い地位に就き続けるに相応しい位置にあることを吾らが尊重するとき、吾らは彼らを取るに足らぬものとして理解することで陥ること以上に偉大な彼らの気高さをこそ知り得るなり。吾らは彼らを取るに足らぬものと名付けるといふことをして、吾らは吾らの献呈の弁明を己自身の手で奪ひたることになりし。しかし、汝の文学と表現は彼ら取るに足らぬものを何か気品のあるものと考えるに足るものとして大いなる悦びを齎し、そして、彼ら取るに足らぬものと、大いなる賛意とともに彼らの作者は今も生きてゐるとして遂行する故に、吾らは望むべし、(彼らが彼が息絶えた後も生き存へ、そして、彼は、幾人かのよく知られしものに彼自身の執筆で遺言執行人になる運命を免れし)汝は彼らの親に対してする、つまり、彼らを溺愛するやうに扱ふらむことを。どの作品で彼のパトロンを選ぶか、または彼らを見出すかどうかで大きな差異が生じたり。これは両方を為す。彼らが演じられし時、幾つかの配役の汝の文学と表現の好みがたっぷりと盛り込まれてゐることに関して、彼らは出版されし以前のものとして、大型の本は汝のものであることを要請せり。吾らはそれらを唯、集め、そして、その死を正式のものと為し、彼の孤児たちの保護者たちを得ることを正式のものとして為しぬ。野心がなければ、自己利益も名声もどちらも得られぬ。価値ある友人として生きてゐる仲間として記憶に留めることのみ吾らがシェイクスピアでありし、慎ましい汝の最も高貴な支援者の彼の演劇への申し出がありたり。その点で、汝の文学と作品に匹敵する人物を今以て見ぬのであるが、しかし、ある種の宗教的なる演説において、完璧に汝の文学と表現の高き地位に相応しい価値で演じしことは献呈者である吾らが細心の注意を配りしところなりし。しかし、陛下、そこで吾らは熟慮する吾らの能力もまた、渇望しなければならぬのであります。吾らは吾らの能力以上のことはできませぬ0。国家は四つのもの、つまり、牛乳、クリーム、果実類、或ひは国家で収穫できるものを差し出すなり。そして、多くの国家は(吾らが耳にしたところ)ガムも香料もなく、パン酵母のケーキで要望に応へるなり。吾ができるどんな意味でも彼ら天井桟敷の人人に近づくことはぬかりなし。そして、彼らが寺院に祀られるとき、凶暴とはいへ、殆どの物事はより正確でありける。その名に、それ故に、汝の従者、シェイクスピアのそれらの遺稿を汝の高貴な地位に対して吾らはもっとも慎ましく神聖とする、詰まる所、悦びが彼らの中で存在することは汝の文学と表現を、彼の名声を、そして、吾らの落ち度を永遠のものとするに違いなく、もしあるものが生きてゐるものにとっても死んでしまったものにとっても両方彼らの感謝の念を示すためにとても注意深く、一対のものによって託されるならば、このままであり続けるだらう。

 

汝が陛下の最も恩を受けて     ジョン・ヘミンジ

ヘンリー・コンデル

 

 

1623年の二つ折り半のフォリオ本から

 

偉大なる様様な読者たちへ

 

書き綴ることのみ以外できない彼にとっては最も才能が発揮できることから。そこで汝は番号をふられるなり。吾らはむしろ汝が重きを持つと考へるなり。特に全ての本の運命が汝の能力によるとき。そして、汝の頭ばかりではなく、汝の財力によるとき。さて、今、公のものとなり、そして、汝は汝の特権の地位にあるらむ、解ってゐるらむ――読み酷評するべきなり。さうし給へ、しかし、最初に買ふべし。最も賞賛すべき本がそれなり、文房具商はさういふなり。そして、余りに常軌を逸してゐるので汝の脳は驚きを禁じ得ぬらむ、若しくは汝の知性は出版を許可された本の内容と同じくなり、替えは効かぬなり。汝の六ペンス銀貨に値するか、汝の数シリングの価値に値するか、汝の五シリングの価値に絶えず値するか、若しくはそれ以上の価値があるかを判断し給へ、その結果として汝はそれに見合ってゐて歓迎すべきものであると看做すことになりし。しかし、汝がすることとは何をおいても、須く買ふべし。酷評は商売を追ひ立てまじらむ、然もなくば金銭を喜んで支払はせるらむ。汝は機知の法案判事であるらむ、ブラックフレイアズやそのコックピット(古戦場)の舞台に座し、毎日、演劇の手はずを整へりけり、さう、それらの演劇は彼らの試みを既になし、あらゆる訴へを成し遂げ、法廷の宣告によるといふよりもむしろ賞賛の言葉をいくらか手に入れることが現在、正しく生じてゐるけり。

冀はれしことが、吾らは認めし、価値あるものでありけると、つまり、作者自身は彼自身の作品がきちんと見解を表明し見届けるべく生きてゐるなり。しかし、違ったことを命じられけるので、そして、彼は死によりてその権利から離れたので、吾らは汝が彼の友たちが彼らの助けや苦労をともにする役目にあったことを妬まぬことを祈りけるが、その結果として蒐集し出版したりけり、そして、また、その結果としていくつか剽窃され、そして、不正の複製を以て汝は酷評したところより以前のものとしてそれらを出版したりたる、不当なペテンを働く詐欺師たちや盗人たちによりて消ゆることのない瑕疵を負ひ、そして改竄されたより以前のものとして、つまり、彼らの正体を暴いたりけり、さうしてそれらは今、修正が施され、五体満足な完全な形で汝の目の前に差し出されるなり、彼がそれらを認めしものとしてそれらに番号付けをして完全な状態でありけるなり、彼は「自然」の幸せな真似人なりける如く、彼は最も紳士的な自然の表現者なりけり、而して吾らは彼から彼の紙紙に書き損ねなきものを受け取りし。しかし、彼の作品を蒐集しそれらを汝に提供せしことばかりでなく、彼を賞賛することが吾らの専門分野なり。彼を読むのは汝らぞよ、そして、それ故に我らは望む、汝に理解できる能力があらんことを、さすれば汝は描かれてゐることと汝を摑んで離さぬことと両方を十分に理解するらむ、なぜなら彼の機知は失われしほどに隠すことはできぬなり。それ故、彼を読み給へ、そして、繰り返し繰り返し、そして、そこで汝が彼が好きになれぬならば、確かに汝は彼を理解できぬといふあきらかなる危険性を露呈せし。そして、さうして吾らは汝に彼の友たちを残しけり、彼らはもし汝が必要なら汝の案内人にならむなり、もし汝が必要ないならば汝自身を先頭に他のものを導くなり、さうした読者を吾らは彼を思ひ冀ふばかりなり。

 

ジョン・ヘミンジ

ヘンリー・コンデル

 

ヘンリー六世 第一部

 

登場人物

ヘンリー六世王

グロスター公爵、王の叔父で守護者

トーマス・ベッドフォード(トマ・ボーフォート)、エクセター公爵、そして、フランスの摂政

ヘンリー・ベッドフォード(アンリ・ボーフォート)、王の大叔父、ウィンチェスター司教、そして、その後の枢機卿

ジョン・ベッドフォード(ヨハン・ボーフォート)、サマーセット伯爵、後の公爵

リチャード・プランタジニト、リチャード晩年の息子、ケンブリッジ伯爵、後のヨーク公爵

ウォリック伯爵

ソールズベリー伯爵

サフォーク伯爵

トールボット卿、後のシュリュースブリー伯爵

ジョン・トールボット、彼の息子

エドムンド・モーティマー、マーチ伯爵

サー・ジョン・ファスタルフ

サー・ヰリアム・ルーシー

サー・ヰリアム・グランスデイル

サー・トーマス・ガーグレイヴ

ロンドン市長

ウッドヴィル、タワー中尉

ヴァーノン、ホワイトローズ若しくはヨーク派

バセット、レッドローズ若しくはランカスター派

弁護士、モーティマーの看守たち

シャルル、ドーフィン、そして、後のフランスの王

レニエ、アンジョー公爵、ナポリの名ばかりの王

バーガンディ公爵

アランソン公爵

オルレアンの       私生児

パリ市長

オルレアンの砲兵隊長、そして、彼の息子

ボルドーのフランス軍将軍

フランス軍曹長、守衛

老ひたキリスト教徒、ヨアン・ラ・プセユの父

マーガレット、レニエの娘、後にヘンリー王と結婚

オーヴェルネ伯爵夫人

ジャンヌ・ラ・プセユ、普通ジャンヌ・ダルクと呼ばれし

卿たち、塔の看守たち、伝令管たち、将校たち、兵士たち、使者たちと従者たち

ラ・プセユに現れし凶悪な悪霊たち

 

場面――イングランドの側、フランスの側

 

第一幕第一場

ウェストミンスター修道院

 

埋葬曲。ヘンリー五世王の葬儀が現れ、それ付き従ひてベッドフォード公爵、即ちフランスの摂政、グロスター公爵、即ち守護者、エクセター公爵、ウォーウィック伯爵、ウィンチェスター司教、勅使、などが登場。

ベッドフォード公爵

黒き帳が天に垂れ込めん、昼が夜へと変はりゆき給へ!

時間と状況の変化を意味する、彗星群よ、

空にある汝の水晶のやうなふさふさした髪を誇示し給へ、

そして、それを以て悪しき不快な星星を懲らしめ給へ

さすればヘンリーの死に同意するなり!

ヘンリー五世よ、そなたは余りにも誉れ高く永きに亙り生きられぬなり!

英国はそなたほどの誉れ高き王をこれまで一度たりとも失ったことなし。

グロスター公爵

英国は彼の御代まで王を戴きしことはなかりし。

彼の美徳こそ支配するに相応しい、

彼が劔を翳せしば彼の輝きで人人を目眩まし、

彼の腕はドラゴンの翼以上に拡がりし、

彼の火花迸る目の輝きは、憤怒の炎で満ち溢れ、

更に目眩まし、そして、敵たちを背後に追ひやりし

彼らの顔に対しての真昼の太陽の凶暴な光によりて屈服させるより以上に。

吾は何といふらむ? 彼の行ひは全ての演説より優れし、

彼は一度手を振り上げれば、必ず征服せし。

エクセター公爵

吾らは喪服で弔ふ、何故血で吾らは弔はぬ?

ヘンリーは薨去せし、そして二度と甦らぬだらう、

木棺の上に吾らは参列す、

そして、死の不名誉な勝利

かやうな栄光とともにある吾らは、

虜囚の如く勝ち誇りし二輪戦闘馬車に縛り付けられし。

何だ! 吾らは不幸の惑星に呪はれしか

かやうに吾らの栄光を消し去ることを企みし不幸の惑星に?

然もなくば吾らは思ふ、狡猾な才覚のあるフランスの

手品師や魔術師が、つまり、彼を恐れて

魔法の呪文で彼の最期を企ましらむや?

ウィンチェスター司教

彼は王の中の王の聖なる王なり。

フランスの恐ろしい審判の日といっても

彼の一瞥ほど恐ろしくはならむまし。

軍勢の神の戦ひを彼は戦ひし、

協会で祈る人々をして彼は余りの繁栄を齎しぬ。

グロスター公爵

教会! それは何処か? 聖職者たちは祈ってはをらぬ、

彼の命の寿命はさうでなければこんなにも早く消えはしないなり、

汝らは誰もが軟弱な王子のみを好いていたなり、

書生の如き彼に汝らは気後れしてをるらむ。

ウィンチェスター司教

グロスター公、吾らが好いてゐことが何であれ、汝は「摂政」なり、

そして、王子と国に対してに命令する立場に見受けられる。

汝の夫人は高慢なりぬ、彼女は汝を畏れまし、

「神」若しくは聖職者の信仰心以上に。

グロスター公爵

それは信仰に値せぬ、なぜならそなたは肉を愛す、

そして、教会へと一年を通してそなたは一度たりとも行かぬ、

そなたの敵に対して祈ることを除いては。

ベッドフォード公爵

已め給へ、争ひを已め給へ、そして、精神を穏やかに休め給へ!

祭壇へ参らう――勅使たちは吾らに従へ――

金の代わりに吾らの武器を供へやう、

武器は使ひ物にならぬので、今や、つまり、ヘンリーは死の床なり――

後世の人々よ、惨めな歳月が待ってをり

母親は潤んだ目で赤子に乳を吸はせるとき、

吾らの島は塩味の涙の沼地を作るらむ、

そして、女性のみがその死を泣き叫ぶに任せるなり――

ヘンリー五世! 汝が霊に吾は祈りぬ、

この地に繁栄あれ、市民の口論からこの地を守り給へ!

天の害ある惑星どもと戦ひ給へ!

ずっとより栄光ある星を汝が魂が作るらむ

ジュリアス・シーザーよりも然もなくばずっとより輝かしくあれ――

伝令者登場

伝令者

誉れ高き諸卿、ご健勝に幸あれ!

悲しい知らせを私めはあなた様らにフランスから持って参りました

損害の、死亡者の、そして、敗北、

ギュイエンヌ、シャンパーニュ、ランス、ルーアン、オルレアン、

パリ、ジゾール、ポワティエ、全て敗北。

ベッドフォード公爵

お主、何をいふ、貴様! 死したヘンリーの亡骸の前で

静かに話せ、然もなくばそれらの偉大な街街の損失は

彼に彼の指導力を破裂させ、そして、死から生き返るらむ。

グロスター公爵

パリを失ひしか? ルーアンも降伏せしか?

もしヘンリーが再び生へ呼び戻されしたところで、

それらの知らせは彼をして再び亡霊にならせる因にならむ。

エクセター公爵

それらはどのやうにして失ひしか? どんな背信行為がありしか?

伝令者

背信行為はあるまじ、しかし、兵士と軍資金が不足してをり。

兵士たちの中で、これに対して不平をいふなり、

而してあなた様たちはここでいくつかの派閥抗争を続けてをりし、

そして、一方で戦場では殺し合ひと戦ひが行はれり、

あなた様はあなた様の大将たちと言ひ争ひを続けてをり、

あるものはくずくずと続けてゐる戦争を、軍資金なく戦ってをり、

別のものたちはいち早く逃げをり、しかし、羽はなし

第三のものたちは考へてをり、浪費せずして、

狡猾で公正な言葉で平和は獲得するらむことを。

目覚めよ、目覚めよ、英国人の気高さよ!

あなた様方たちの誉れ高いことが新たに生みし怠惰で暗くすべきでなし、

農作物は武器の中のアイリスの花なり、

その英国の外套の半分を削減するべし。

エクセター公爵

仮に吾らの涙がこの葬儀に欠けてゐるとして、

それらの知らせは吾らの涙の流れる流れを呼び起こし得るらむか。

ベッドフォード公爵

吾はそれらが気懸かりなり、摂政なりしが、吾はフランスの。

吾に吾の鋼鉄製の外套を与へ給へ! 吾はフランスのために戦ふらむ。

それらの泣き叫ぶ外套とともに去り給へ!

数数の傷が吾をフランス人として立たせし、目に代はって、

絶えず疼く数数の傷の苦痛が涙を流すことで。

第二の伝令者が登場

伝令者

諸卿様方、これらの手紙を見てくださいまし、全てが悪夢の知らせなり。

フランスは英国に全く以て反抗してをり、

重要でない寂れた街街を除いては、

ランスでは皇太子シャルルが戴冠式を執り行ひ、

オルレアンの私生児は彼とともに行動をともにしてゐるなり、

統治者、アンジュー公爵は彼の領地を獲得せり、

アランソン公爵は彼の側につくなり。

エクセター公爵

皇太子が戴冠しただと! 彼へ全て馳せ参じただと!

嗚呼、吾らはこの非難から何処へ逃げようぞ?

グロスター公爵

吾らは逃げなどしまじ、しかし、的の喉へと馳せ参じる――

ベッドフォード、汝がのろのろとしてゐるなら、吾が戦ふらむ。

ベッドフォード公爵

グロスター、何故吾が先陣の汝を疑ふらむ?

兵士は吾の考への中では既に集結してをり、

それで既にフランスは瞬く間に占領するなり。

第三の伝令者が登場

第三の伝令者

吾が栄光ある諸卿方方、あなた方の哀しみに更に付け加へねばなりません、

あなた様方がヘンリー王の葬列に対して涙してゐるところに

吾はあなた様方に陰鬱な戦ひの報告をせねばなりませぬ

勇猛果敢なトールボット長官とフランス軍との間の。

ウィンチェスター司教

何! トールボットが打ち勝ったのか? さうであらう!

第三の伝令者

おお、違ふなり、トールボット長官が倒れし、

状況は私めがあなた様方に更に詳細に申し上げまする、

去る八月十日、この悲惨な長官は

オルレアン包囲作戦から撤退してゐる時、

六千の兵士では全く足りず、

二十三万のフランス軍により

包囲され、そして、討って出されし。

彼は彼の兵士に隊列を組む暇もなく、

彼は彼の射手たちの前に矛隊を置きたしが数が足りず、

その代わり、鋭き尖りし棒を、生け垣から引き千切り、

彼らは狼狽えて地にそれを突き立てし、

騎馬隊を潰滅から守るべく。

三時間以上、戦は続きし、

豪傑トールボットは彼の剣と槍で人間離れした働きをしてをりしところ、

数百人を彼は地獄へ送りし、誰も彼に立ち向かふべきものはゐなかりし、

此処彼処、あらゆるところで怒り狂ひし彼は飛び回りし、

フランス軍は突然叫び、悪魔が武装せりと、

全ての兵士が立ったまま彼を凝視するばかり、

彼の兵士たち、彼の物怖じせぬ精神を窺ひながら、

「トールボット! トールボット!」と力一杯叫びし、

そして、戦の中心へと猛然と走りぬ。

ここで勝利は決したし、

もしサー・ジョン・ファストルフが臆病でなければ、

彼は、先陣にゐ続け、――背後に陣地を確保せし、

彼らを助け引き連れる目的で、――

臆病にも逃げし、一撃も与へずに。

此処で、大勢の兵士は潰滅し、大量殺戮へと向かひし、

彼らは敵軍に囲まれし、

一人の卑しいワロン人が皇太子の天恵に与るべく、

トールボットの背後から槍で突き刺しぬ、

全てのフランス軍兵士は大将の下に力強く集ひても、

其の顔を一度たりとも見ることなぞ想像だにできぬほどに勇猛果敢なりしが。

ベッドフォード公爵

トールボットは斃れしか? その時吾は自死をするらむ、

華麗に、そして、気楽にここで何もできないままに生き延びたところで、

そして、一介の価値ある長が、助けがないばかりに、

卑怯な敵に裏切られしといふのに。

第三の伝令者

おお、いいえ、彼は生きてをりまする、しかし、虜囚として捉へられし、

そして、彼とともにスケイルズ卿とハンガーフォード卿も一緒に、

残りの殆どは殺戮され、または同様に虜囚として捉えられたり。

ベッドフォード公爵

彼の身請け金は吾以外払ふものなし、

吾は皇太子を王位から真っ逆さまに引きずり出すらむ、――

彼の冠は我が友の身請け金になるらむ、

彼らの大将の四人と吾が方の大将の一人と交換するに相応しけり、――

さらば、吾が主よ、吾が仕事に吾は赴くらむ、

直ちにフランスに大篝火を灯さん、

尚も偉大なる聖ジョージの祝宴を守るべく、

一万の兵士が吾とともに征くらむ、

吾が兵士たちの残酷な行為は全欧州を震え上がらすらむ。

第三の伝令者

さやうなり、あなた様が必要なり、さすればオルレアンは再び我が物となるらむ、

英国の兵士には弱気と気弱さが生じけり、

ソールズベリー卿は援軍を切望してをり、

そして、反乱から彼の兵士を守ることは困難を極めたり、

彼らは余りに少ないのでそれほどの多勢を監視するのが不可能故に。

エクセター公爵

思ひ出したり、諸卿たちよ、ヘンリーが誓ひし時の汝らの宣誓を、

皇太子を全きに鎮圧するか、

若しくは汝らは彼を全的に服従させることを誓ひしことを。

ベッドフォード公爵

吾は其を思ひ出したり、そして、此処で別れぢゃ、

支度が整ひ次第出発するべく。

(退場)

グロスター公爵

吾は「塔」へ赴かむ、出来得る限り急いで、

大砲と兵站を見るべく。

そして、それから吾は若きヘンリー王に不満を申しぬ

(退場)

エクセター公爵

エルタムへ、吾は赴かむ、其処に若き王が御座すなり、

彼の特別後見人を任命されたなり、

其処で王の安寧を守ることが吾の最善の方策なむ

(退場)

ウィンチェスター司教

各各が各各の取り組むべき持ち場と任務に就きし、

吾は残されたり、残ってゐても何もすることなし。

しかし、長く吾は役職を全うしてこなかり、

エルタムから王を吾は人知れず連れ去るつもりなり、

そして、公の繁栄の過酷でありながら最も最高の長に相応しい玉座に御座すなり。

(退場)

 

第二場

 

フランス。オルレアンの直前。

華やかに音が鳴り響く。シャルル、アランソン、レニエが、太鼓で行進曲が演奏される中、兵士たちを引き連れて登場。

 

シャルル

火星マルスが本当に動くなり、天のものでさへ、

況や地上の軍神マルスにおいてをや、こんな日は知らぬなり、

最近まで火星は英国側を照らすけり、

今、吾らは勝者なり、吾らの上で火星は微笑むなり。

今、どの街街を然し乍ら、吾らは占拠せしか?

悦びで此処、オルレアン近くで吾らは野営するなりし、

一方、飢ゑた英国軍は、蒼白き幽霊のやう、

一月の僅か一時間のみ吾らを包囲するなり。

アランソン公爵

英国軍はポリッジと太った雄牛のビーフが欠乏す、

いづれにせよ、彼らは騾馬のやうに減量するらむ、

そして、彼らは口に飼ひ葉を紐で括り付け、

然もなくば彼らは、溺れる鼠のやうに哀れに見えし。

レニエ

包囲を解かう、何故吾らは懶惰に此処で野営するなり?

タールボットは捕らへられたり、彼を吾らは畏れらむ、

狂気のサールスベリー以外残ってをらん、

そして、彼は怒りに任せて侵攻するのは十分に考へられるなり、――

兵士がなくとも軍資金がなくとも彼は戦争を遂行するべし、

シャルル

鳴り響くべし、警報よ、鳴り響け! 吾らは彼らに突進するらむ。

今だ、絶望的なフランスの名誉のために!――

彼は吾を殺せし吾が死を許すなり

彼は吾を見てゐた時、一歩後退せしを、然もなくば逃げるを

(三人退場)

此処で警報。彼らは大きな損失を被って英国軍に敗れるなり。シャルル、アランソン、レニエ、その他のものが登場。

シャルル

それと匹敵するやうなことを未だかつて誰が見たといふのか? 吾はどんな兵士を引き連れしのか!――

犬ども! 臆病者ども! 卑怯者ども!――吾は一度も逃げなむ、

しかし、彼らは吾を敵兵の真ん中に残しけり。

レニエ

サールスベリーは破れかぶれの殺人者なり、

彼は彼の人生にうんざりして自棄糞に戦へるなり。

他の諸卿も、食べ物に飢ゑた獅子の如し、

彼らの飢ゑた餌の如く吾らに突進しようぞ。

アランソン公爵

フロアサール、吾らが同胞の男は、記録す

英国のオリヴィエとローランの全てを育みし

エドワード三世時代に。

より真実味を以てこのことが証明するらむ、

サムソンやゴリアテばかりが戦闘に送られし。此方の兵力は十倍!

痩せたならず者が身を乗り出す! 誰が未だかつて予想できたがらうか

彼らがそのやうな勇気と豪胆さを持ってゐることを?

シャルル

この街から去らう、といふのも彼らは向かう見ずの奴隷なり、

そして、飢ゑは彼らにより従属を強めるらむ、

古きより我は知るらむ、

包囲網を見限るためよりむしろ彼らは彼らの歯で壁を引き裂き落とすことを望むらむ。

レニエ

吾思ふに、幾分奇妙な策略や策謀によりて、

彼らの武器は時計の如く設定され打ち続くなり

また、彼らは彼らがするほどに持ち堪へることは不可能らむ。

吾に同意するなら、吾らは彼らを孤立させらむとす。

アランソン公爵

さうしようぞ。

 

オルレアンの私生児が登場

 

オルレアンの私生児

皇太子王は何処にぞ? 吾は彼の方様への知らせを持って参りまし。

シャルル

オルレアンの私生児よ、歓迎の極みぞ。

オルレアンの私生児

私にはあなた様の様子は哀しく思へるなり、あなた様の陽気さはぞっとさせまするけり、

先ほどの敗退はこの侮辱を齎すらむか?

暗鬱になるべからず、といふのも援軍は掌中にあり、

聖なる処女をこちらへ私めとともに私めが連れて参るなり、

ある幻影が天から彼女に送られしによりて

任じられし聖なる処女はこのうんざりする包囲を解くべし、

そして、英国軍をフランス国境外まで追い払ひし。

深い預言者の魂を彼女は持ちし、

古代ローマの七人の巫女を超えてをり、

過去のこと、そして、来るべきことを彼女は見つけられし。

話させ給へ、彼女の中に呼ばれしことを、私めの言葉を信じ給へ、

それといふのもそれらは確実なるものでぴたりと当たるなり。

シャルル

行き給へ、彼女を招請し給へ。(私生児退場)しかし、最初に彼女の業を試みなくては、

レニエ、汝は私の代わりに皇太子として立ち給へ、

居丈高に彼女に質問をし、汝の姿は厳めしくし給へ、

かうして、吾らは彼女が所持してゐる業を聞き分けられらむ。

(全員退場)

オルレアンの私生児が、ジョアン・ラ・ピュセルとともに登場。

レニエ

美しい乙女よ、汝か、驚くべき功績をなさむといふのは?

ジョアン・ラ・ピュセル

レニエ、汝か、私めを騙さうと考えてゐるのは?

皇太子は何処ぞ?――き給へ、隠れてをらずき給へ、

吾は、あなた様をよく知りまうし、一度もお目にかかったことはなくとも、

驚かないでくれまし、私めの前では隠さずに御座しまし、

個人的に私めはあなた様と別のところで話したく候。――

諸卿を下がらせ給へ、然らずんば私めらに暫く二人の時間を与へ給へ。

レニエ

彼女は先陣切って突進する勇気を持ってゐるなり。

ジョアン・ラ・ピュセル

皇太子、私めは羊飼ひの娘として生まれし、

吾が智慧は如何なる芸術の訓練も受けてをりませぬ。

天と吾ら女性の優美さは喜ばせるなり

吾が軽蔑すべき身分において耀くことを以てして、

見給へ、私めは吾が優しい子羊を待つ一方、

そして、太陽の焼け付くやうな暑さで吾が頬は見ての通りなり

神の母は私めにさう見せるやうに企図したり

そして、陛下のある幻影全部において

私めには根本の天命が残されてありなむ、

そして、災禍から吾が国を自由にするなり、

彼女は約束したので彼女は助けむ、そして、成功を保証するなり

完全なる栄光の下、彼女は彼女自身姿を現すなり

そして、かやうにして以前の私めは黒く浅黒きなり、

彼女が私めを満たす美しい光線を以てして

あなた様が目にしてゐる美に祝福されし

あなた様は出来得る限りどんな質問も私めに尋ね給へ、

私めは臨機応変に答へるなり、

もし、あなた様が敢へてと仰せば、吾が勇気を戦闘員として試すらむ、

そして、あなた様は私めが性を超えてゐることを見出すらむ。

このやうにことを解決させてみよ、あなた様は幸運であるらむ、

もしも、あなた様が、私めをあなた様の戦友として受け容れてくれるならば。

シャルル

汝は汝の気高い言葉で吾を驚嘆せし、

吾が汝の武勇を立てりましのみこの証明になるなり、――

一人の兵士として汝は吾に屈服するらむ、

そして、もし汝が打ち負かすなら、汝の言葉は真実なり、

然もなくば、吾は全ての信頼を放棄するなり。

ジョアン・ラ・プュセル

私めは準備万端なり、これが鋭き刃の劔なり、

互ひの面は五本のアイリスで装飾されし

トゥーレーヌ地方の聖カトレーヌ教会の庭において

たくさんの古き鉄から私めが進んで選びしものなり。

シャルル

それでは来い、おお、神の名において、吾は如何なる女性も怖くなし。

ジョアン・ラ・プュセル

そして、私めが生きてゐる間、私めは決して男性から逃げはせぬ。

[ここで彼らは戦ひジョアン・ラ・プュセルが勝利する]

シャルル

待て、剣を留めよ! 汝はアマゾンなり。

そして、デボラの剣と戦へり。

ジョアン・・ラ・プュセル

基督の御母様が私めを助けるなり、また、私めは余りに弱過ぎしけり。

シャルル

誰が汝を助けやうとも、吾を須く助けるべしは汝なり、

堪へ難く吾は汝の欲望とともに燃え尽きたし、

汝に一度支配されし吾が心と両腕、

素晴らしき処女、もし汝の名がさうならば、

吾を汝の僕にし給へ、君主としてではないぞ、

かやうにして汝に冀ふのはフランス皇太子なり。

ジョアン・ラ・プュセル

私めは如何なる愛の典例もお見通しなり、

私めの職業は天からの神聖なもの故、

これから私めは汝の敵全てと戦ひし後に、

そのとき私めは報償を考へておくらむ。

シャルル

それまでの間、汝に平伏した僕を丁重に眺めてくれぬか。

レニエ

吾が卿は、私が思ふに、話がいと長けり。

アランソン公爵

疑ひなく彼はこの女性の彼女の下着に至るまで告白を訊くなり、

さうでなければ彼は話をそれほどに長くすることはできぬ。

レニエ

彼は素晴らしきを保持することから、彼を遮らうぞ?

アランソン公爵

彼は吾ら貧しきものたちが将に知ってゐる以上のことをするつもりらむ、

それらの女性たちは彼女らの言葉で誘惑するなり。

レニエ

吾が卿よ、あなた様はどちらにいらっしゃるなり? どんな妙案を思ひつきしか?

吾らはオルレアンを已めやうか、それとも攻めやうか?

ジョアン・ラ・プュセル

何故、否、吾はいふ、臆病を信用するまじ!

最期の息をするまで戦ふぞ、吾が汝を守らむ。

シャルル

彼女のいふことに吾確信す、吾らは戦ふぞ。

ジョアン・ラ・プュセル

私めは英国の災難であるべく天恵を与へられし。

今夜包囲網は確かに私めが解かむ、

暖かな小春日和に期待を込めて、

私めがこれらの戦争に加わったからには。

栄光は水面の波紋の如しなり、

それはそれ自身大きくなることを已めず

広く拡がりしことによりて、無へと分散するまで。

ヘンリーの死をして英国の波紋は終わりし、

それを含みし栄光の数数は霧散しをり。

誇りと侮辱の船の如く私めは今あり

それはカエサルとその未来をすぐさま曝け出すなり。

シャルル

マホメットは一羽の鳩により霊感を与えられしか?

それでは鷲によりて汝は霊感を与えられし。

偉大なるコンスタンティヌス帝国の母、ヘレナは、

汝のやうに聖ピリポの娘たちも汝のやううにはゐかぬ。

ヴィーナスの星の輝きは地上に降り注ぐ、

これまで汝はどれ程多くの人人に崇拝されしか?

アレンソン卿

遅れることを已めるべし、そして、包囲に対して立ち上がるべし

レニエ

女よ、汝は吾らの名誉を保てることならば何でもせよ、

オルレアンから彼らを追い出し給へ、そして、不朽の名声を齎した給へ。

シャルル

さあ、出発しよう――ついて来給へ、それを追ひ払はふ――

如何なる預言者も信ずるにたらむ、もし彼女が失敗したならば

退場

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