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THE BOOK of AHANIA

THE BOOK of AHANIA

LAMBETH Printed by W Blake 1795

 

「アハイニアの書」

ランベス W・ブレイクにより印刷 1795年

 

第一章

 

1.フューゾン、鉄の羽のある二輪戦闘馬車の上

逆立ちし炎が燃え盛りぬ、彼の激烈な顔貌は

激怒で燃え盛りぬ! 彼の髪と髭はきらきら耀き

彼の胸と肩を素早く動かしけり

煙の雲の上、彼の二輪戦闘馬車は憤怒で燃え立つなり

そして、彼の右腕は雲の中で赤赤と燃え盛り

巨大な球体を象りつつ、彼の憤怒は燃え盛り

雷岩が象られる如し

「ユリゼンの息子」は黙して燃え盛りつつ

 

2.吾らはこの煙の「悪魔」を礼拝するらむか

と、フューゾンがいひけり、この抽象的な非在を

この雲の如し「神」が水の上に御座しけり

時に見えし、時に曖昧模糊としてゐるなり、哀しみの「王」をや?

 

3.さう彼は語りぬ、激しく燃え盛る炎の中で、

憤慨して眉を顰めるユリゼンの上で、

上では憤怒の「球体」が揺れ動くなり

激高で轟音を立てつつ、彼は投げし

その咆哮する「球体」を、それは燃えさかり飛んで行きし

一筋の飢ゑた光へ向かって長く伸びつつ。素早く

 

4.燃え盛る光は狂喜乱舞しつつも抗ひぬ

ユリゼンの広大な円盤は激変せし

何マイルもの「虚無」を超えて。

 

5.冬が絶えず打ち勝つところには製粉場が築かれし、

十度目の冬、円盤は

相変はらず憤怒に燃え盛りつつ冷たい鎚に堪へてをり。

 

6.しかし、それへ送られし力強き腕は、

轟く光を覚えてをり、嗤ひながらそれは引き裂きぬ

打ち勝てり塊を、その方針を曲げずに

ユリゼンの冷たき腰部は分かたれつ

 

7.悲惨な金切り声を上げし彼の不可視の性欲

深淵はユリゼンと呻くなり! 彼の恐ろしき腕を伸ばしつつ

アハイニア(その名は彼の分かたれし魂の名)

彼は「嫉妬」の山脈の上で摑まへし。

彼は苦悶に満ちて呻くけり、そして、彼女を「罪」と呼びし

彼女と口付けを交はし、そして、彼女のことで泣きし、

それから彼女をしじまの漆黒の闇に隠しぬ、

彼女が不可視と雖も「嫉妬」から

 

8.彼女は虚ろな影が彷徨ふところへ堕ちし

ユリゼンの渾沌として円運動する漆黒の闇の中に

月が地球を苦悶の中巡るやうに、

希望はなし! 忌まはしい! 一つの死の影、

不可視、曖昧、未知、

「疫病」の母。

 

9.しかし、フューゾンの炎の光は

エジプトへ火柱を齎しけり

五百年地上を彷徨ひ

ロスがそれを摑まへ、そして、一つの塊として鍛錬して

太陽の本体とともに。

 

第二章(d)

 

1.しかし、ユリゼンは眉間に皺を寄せ、

そして、彼の目は怒りで蒼白くなり、彼の唇は

蒼く変はり、泣きつつ自責の念で

彼は彼の「弓」を用意せし、

 

2.「何本もの肋骨」を形作りし、それは彼の闇の孤独の中で

名もなき怪物たちが森に堕ちしとき、

生じし。彼の恐ろしいほどの思索において

彼の山脈から洪水の如く激流が下り落ちつ

狂気が蔽ひし濁流が激流となりて

不自然な生まれ方をせし「いくつかの卵」とともに

直ちに孵化しつつ、何ものかが彼の丘丘で咆哮するなり

あるものは谷谷に留まり、あるものは飛び上がり空中に飛びし

 

3.それらのうち、一匹の巨大な恐ろしい大蛇に

鱗で蔽はれ毒のある角を持ち

ユリゼンの膝にさへ近づくなり

彼が彼の闇の根を張りし「槲の木」の上に御座すとき。

 

4.彼の角をして彼は激怒を押し出しき

大いなる衝突、そして、大いなる嫉妬

冷たき毒の中、しかし、ユリゼンは彼を強打せし

 

5.最初に彼は彼の血ともに岩岩を毒で穢せし

それから彼の幾本もの肋骨を磨きし、そして、彼の腱を

干からびせし、冬までそれらを別別に横たへり、

それから「弓」が闇の中準備されし、この「弓」を、

毒に穢されし岩はしじまに置かれし、

彼は「弓」にそれらの言葉を語りき。

 

6.おお、秘匿されしままの雲雲の「弓」よ!

おお、性欲が形作りし怪物のそれの神経繊維よ

これを素早く岩にお送らうぞ、不可視のままに

フューゾンの胸の上の、闇の雲よ

 

7.そういひつつ、彼の傷の苦悶の中、

彼はゆっくりと巨大な肋骨を撓めし、

闇の円運動! それから固定せし

静止の中の腱、それから岩

毒の源! 人為的に置かれし、持ち上げるのは困難なり

その重さは莫大なり、しじまが岩に横たはり。

 

8.フューゾンが彼の虎の群れを放ちつつ

ユリゼンを憤怒で殺戮せしと考へてけり。

吾は「神」なり。と彼は語りき、森羅万象の長兄たる!

 

9.突然岩がピューと音を立てるなり、素早く、しかし、不可視に

フューゾンは吹っ飛び、彼の胸に命中するなり、

彼の美麗な顔貌、髪の房房、

天の曙光が照らしけりそれは

闇ともに強打せり、形が崩れ行き

そして、森の縁まで四肢を伸ばして斃れけり

 

10.しかし、岩は地球上へと堕ち、

アラビアのシナイ山となりし。

 

第三章

 

1.「球体」は打ち震へし、そして、ユリゼンは腰を下ろすなり

黒き雲雲の上に、彼の聖油で清めし傷がずきずき痛みし

軟膏が虚無の上を流れ落ちし

血と混じり、此処で蛇は彼女の毒を得るなり

 

2.困難と非常な痛みを以て、ユリゼンは

死んだ骸を高高と持ち上げし、

肩の上に載せ彼はそれを運びぬ

一本の「木」が「莫大なもの」に引っ掛かりしところへと

 

3.それといふのもユリゼンが縮こまりし時

「幾つもの永劫」から、彼は岩の上に座りし

不毛の、彼自身の岩は

幻想を益益高めたことから石化せし

数多の涙がその岩の上に零れ落ち、

数多の草木の火花が

すぐさま苦痛を感じし根を撃ちし

「神秘」の、彼の踵の下、

鬱蒼とした木が育ちぬ、彼は書きし

彼の鉄の書に黙黙と、

ぞっとするやうな植物の撓んだ主枝の数数が

それが地面を感じたときに根まで成長せしまで

そして、再び数多の草木が芽生えし

 

4.驚き始めしユリゼンは! その時

彼は辺りに取り囲まれし自身を見し

そして、木木により屋根状に蔽はれし

彼は立ち上がりしが幾つもの幹がとても分厚く立てり

彼は困難と苦痛を持って

彼の「数数の書」、その鉄の「書」以外全てを持ち運びし、

その暗鬱な影から

 

5.その「木」は今尚、「虚無」を蔽ひて成長せし

至る所それ自身の根を張りながら

深い悲しみの終はりなき迷宮!

 

6.彼が最初に生じしその骸は

呪ひをかけられし「不思議の木」の上で、

この「木」の幹の頂上で

ユリゼンはフューゾンを呪ひで釘付けにした。

 

第四章

 

1.悪疫の数多の矢が飛び出しぬ

木の上で蒼白く生きし「骸」の周りから

 

2.その間、ユリゼンは抽象的な微睡みにあり

「永劫」の無限に長き時代において、

彼の「悦びの神経繊維」は熔け、そして、流れ出したとき

青黒き宙空には白き「湖」が

心掻き乱し苦痛と暗鬱な苦悶の中

ある時は引き延ばされ、あると時は素早く球体へと結合せり。

 

3.上部では蒸気となりて流出せり

毒の雲雲の中、それらは濃くなりて漂ひけり

有機的に分裂破綻せし不死を蔽ひて。

恐ろしい痛みが「湖群」を鱗で蔽ひしまで

人間の骨のやうに、硬く暗黒の

 

4.悪疫の雲雲は広がり漂ふ

苦悶の不死の周りを

戛戛と衝突する骨の周りに止まりつつ

悪疫の上に悪疫が、形の上に形が。

血と苦悶の中で叫びながら翼が生えたり

 

5.「永劫の預言者」は彼の金床を叩きぬ

孤絶した闇の中、憤怒して

彼は鉄の網を周りに鍛へ上げし

そして、ロスは骨骨の周りにそれを投げし

 

6.ぱたぱたとはためく虚無の金切り声を上げしその形たち

あるものは筋肉と腺に結合され、

ある器官は欲求と欲情を求めし

苦痛に呻く虚無に残されし最も多くのものは

ユリゼンの恐ろしい兵力。

 

7.「木」の上の蒼白き生きてゐる骸の周り

四十年間悪疫の矢が飛びし

 

8.噎び泣き、そして、恐怖、そして、大いなる哀しみが

彼の暗鬱な世界全てを駆け抜けし。

四十年間、全ての彼の息子と娘たちは

頭蓋が硬くなるのを感じし。それから、アジアが

ぶら下がった深淵に生じけり。

 

9.彼らは地上では爬虫類化されし。

 

10.フューゾンは「木」の上で呻き苦しむなり。

 

五章

 

1:アハイニアの悲しみに沈みし声

虚無の上にて泣きをりし。

そして、フューゾンの「木」の周りにて、

孤独な夜に遠く

彼女の声は聞こえし、しかし、彼女は形なく、

しかし、彼女の涙は雲から

その「木」の周りに永劫に落ちるなり

 

2:そして、その声は叫びに変はるなり、嗚呼、ユリゼン! 愛!

暁の花! 吾は非―虚無の縁で泣きぬ、その深遠の幅はいかほどか

アハイニアと汝の間の!

 

3:吾は深遠の縁に横たはれり、

吾は上の暗黒の雲を見し、

吾は暗黒の森と氾濫を見し、

吾が目には荒涼とした光景が飛び込みし!

 

4:泣きながら吾は岩岩を乗り越え歩む

穴穴を乗り越え、そして、死の谷を通り抜け

何故汝はアハイニアを酷く嫌ふのか

汝の輝かし存在から吾を投げ込むべく

「孤独」の「世界」のへと

 

5:吾は彼の腕に触れられず、

彼の膝で啼くことも出来ず、聞けず

彼の声と弓の音を、彼の瞳は見えず

そして歓べす、彼の跫音を聞けず、そして

吾が心はその愛らしき音で高鳴るのだ!

吾はその場に口付け出来ず

即ち彼の輝かしき足が踏みつけしところ

 

しかし、吾は峨峨の上を彷徨ふ

疑ひやうのない必然性を以てして。

 

6:吾が黄金の宮は何処や

吾が象牙の寝台は何処や

吾が朝のときの歓びは何処や

歌を歌ひし、吾が永劫の息子は何処や

 

7:輝しきユリゼン吾が王よ目覚めるべし!

山の歓びを生じるべし。

永劫の谷に至福を齎すべし、

 

8:吾が王よ朝に目覚めるべし!

アハイニアの歓びを抱きしべし

彼の両手を広げし広き胸で、

柔らかき露を含みし雨雲から

彼の収穫の上に驟雨を降らせしまで。

 

9:彼が吾が幸福の魂を

永劫の歓びの息子に与へしとき、

彼が命の娘たちを

吾が愛の部屋に連れ行くとき、

 

10:吾が寝台に至福の赤子を見つけとき。

吾が部屋で胸の乳房で乳を含ませば

永劫の種子で満ちし

おお! 永劫の誕生はアハイニアの周りで歌ひし

彼らの歓びの甘美の交換において。

 

11:成熟に伴ひ膨脹し、そして、膨れに膨れ

吾が体臭で臭ひし風を伴って破裂す。

吾が熟した無花果と石榴の実実は

汝の足下で無邪気な喜びにある

おお、ユリゼン、喜び歌へよ、

 

12:さうして種子で満ちし汝の膝を伴ひ

また、巨大な焔に満ちし汝の手を伴ひ汝は

暁の雲から前へと歩きし

躍動せし歓びの乙女たちの上で

投げ込まれし人間の魂の上で

永劫の智の種子を

 

13:甘美な曙光を

晩にアハイニアが戻る汝の寺院へと投げ掛けし

水滴が誕生へ向け目覚め

吾が母親の歓びは、至福の眠りにありつつ

 

14:しかし、今、孤独のものが峨峨、そして、山山を越えて

汝の愛する胸から放り出されし、

残酷なる嫉妬! 自己恐怖!

自己破壊、どれほど喜べるか、

暗黒の鎖を新生し給へ

野獣の骨がばら撒かれしところ

寒寒と雪を冠した山の上

誕生からの骨骨が埋められしところ

彼らが光を見る前に。

 

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