其処は何の変哲もない《日常》の《世界》でしかなかった。
唯一つ、違ってゐたのは《吾》と《異形の吾》がはっきりと分離してゐた事だった。
それが地獄の全てであったのだ。


最早《吾》は進退谷まったのだ。
何処にも逃げ道はなく、《吾》は只管《吾》であることを強ひられし。


――嗚呼、《吾》が何をしたぞ。
――ふっ、《存在》してしまったことが運の尽きだ。


さう言ふと《異形の吾》は昇天し、《吾》のみが何にもない地獄に未来永劫に残されし。
積 緋露雪

物書き。

Share
Published by
積 緋露雪

Recent Posts

闇を纏ひし吾

闇を纏ひし吾   集…

2日 ago

思念の彼方には

思念の彼方には   …

1週間 ago

恋文のやうに

恋文のやうに   何…

3週間 ago

幻夢

水鏡に満月が宿り、 しずやかな…

4週間 ago

人は麵麭(ぱん)のみに生くるに非ず

不意に労働とは何なのかといふA…

1か月 ago

綴織

最高の綴織に出合った感動は 豈…

1か月 ago