何たることか 何たることか。 《吾》を苦しめてゐる《もの》が《存在》それ自体だといふのか。 ならば、《吾》は《存在》から退くべきなのぢゃないかな。 かうして、《吾》は何時でも《存在》から退く事ばかりを考へて […]
朝靄に消ゆるは誰が影か それは地中から際限なく立ち上る湯気のやうに 直ぐに辺りは濃い朝靄に包まれ、 その中に消ゆる独りの影があったのだが、 瞬く間に朝靄の中に消えてしまったのだ。 これはドッペ […]
記憶飛び体調悪く春沈む 何度ぶちのめせばいいのか春一夜 陽炎に何を重ねる似而非人間 交はりて吾立ち上がりし蜃気楼 早春の寒の戻りに老ひ感じ Gemini-3.1-P […]
闇に紛れて この闇に紛れてまんまと逃げ果せたと思ふな。 何故って、闇自体がお前だからさ。 両の目玉をかっと見開き、 闇の中でも気配でものの存在が解かるお前は、 さぞかしをかしいに違ひない。 ところが、俺はか […]
撲殺 何も言はずにそいつは撲殺されるがままに死んでいった。 その時、その場にゐた者はそいつの眼から決して眼を背けてはいけなかったのだ。 しっかりと撲殺されゆく者のその哀しみを起立した姿勢のまま、 黙って受け […]
影を追ふ 土台自身の影を追ったところで、何か摑める筈もなく、 しかし、それが無駄なことなのは知った上でも、尚、自身の影を追はずして 寂滅するのは口惜しいのは、存在する何ものも同等で、 さう思はずして果たして […]
陽炎 うらうらと立ち上る陽炎は 曖昧であってはならない。 それは、必ず私の存在を証明する証明書。 それが曖昧であっては私の立つ瀬がないではないか。 ゆらゆらと立ち上る陽炎は たまゆらでも揺れて […]
餓鬼 《吾》の内部に棲む餓鬼は何時も腹をすかしてゐるが、 しかし、餓鬼は《吾》が何を喰っても一度たりとも満足した事はない筈だ。 何に対して飢ゑてゐるかを、餓鬼はそもそも知らぬのだ。 ふん! 嗤ってゐるぜ、其 […]
微熱 風邪を引いて微熱がある中、虚ろな目はぼんやりと外界を眺め、 さうして、内界でゆったり浮遊する《吾》に憩ふ。 この安寧は風邪を引いた時のプレゼントで、 この虚ろな時間が私は大好きなのだ。 […]
邂逅 既に《吾》に邂逅してしまった《吾》ほど哀しい《もの》はない。 何故って、《吾》が《吾》において既に断念しなければならないからさ。 断念するとは此の世に対峙することでも背を向けることでもなく、 《世界》 […]