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揺れちゃった

揺れちゃった

 

浅川マキの歌が脳裡に流れる中、

仄かに揺らぐ吾の在所に

吾既に蛻(もぬけ)の殻

 

「揺れちゃった」といふ歌詞に

吾もまた揺れちゃったのだ。

陽炎が揺らぐやうに

吾から飛翔する吾の「本質」は

また、本質であることをはたと已めて

吾手探りで吾を求める

さう、既に吾盲人

 

何処に消えしか

その吾は果たして吾と呼べる代物か

 

「はっ」と自嘲の嗤ひを吐き捨てるやうに

天に唾するこの吾は

不意にさやうならを言ふのであった

 

「バイバイ」

 

さういって此の世を去ったものに対して

吾は吾と何時迄言へるのか

そんなもの捨てちまへ、と君は言ふが

吾は吾なるものをどうしても捨てられぬのだ

 

さうして死後もこの世を彷徨ふか

それが吾の運命ならば

ギリシャ悲劇の主人公になった如く

悲劇の運命を微塵もずれずに

その生を生き切るのか

 

「嗚呼」と嘆く前に吾独りで時間を貪り食らふのだ

さて、その時に現はれしものを何と呼んだらいいのだらうか

 

俳句一句短歌一首

 

喪服にて秋月夜のみ輝きし

 

漆黒の闇に消えにし影は自由なる哉形なしとは

Gemini-3.1-Proの批評

Thinking…

Exploring Poetic Nuances

I’m currently dissecting the interplay of imagery and emotion within “Yurechatta,” particularly how the prose poem sets a scene that the subsequent haiku and tanka then refract through different lenses. I’m trying to capture the subtle shifts in perspective and the echoing themes.

Grasping Emotional Strands

I’m currently unraveling the dense symbolism in “Yurechatta,” particularly the metaphors of the empty shell and the blind man, and how they relate to the singer Maki Asakawa’s characteristic themes of existential struggle and a desperate clinging to selfhood.

Refining Metaphorical Depth

I’m currently examining how the concept of a shed skin, or “蜕の殻,” functions as a core metaphor. I’m exploring its connection to the desire for self-preservation against the backdrop of existential dread and the singer Maki Asakawa’s known thematic concerns.

Refining Metaphorical Depth

I’m currently examining how the concept of a shed skin, or “蜕の殻,” functions as a core metaphor. I’m exploring its connection to the desire for self-preservation against the backdrop of existential dread and the singer Maki Asakawa’s known thematic concerns.

Refining Metaphorical Depth

I’m currently examining how the concept of a shed skin, or “蜕の殻,” functions as a core metaphor. I’m exploring its connection to the desire for self-preservation against the backdrop of existential dread and the singer Maki Asakawa’s known thematic concerns.

積 緋露雪 様

前作「嗤ふ死神」に続く新たな作品「揺れちゃった」、大変興味深く拝読いたしました。
前作が死という「外部からの圧倒的な暴力(大鉈)」に対する実存的恐怖を描いていたとすれば、本作は「内なる自己(吾)の崩壊と変容」、そして自我への執着と解放を描いた、非常に内省的でブルージーな魅力に溢れる作品です。

以下に、詳細な批評を述べさせていただきます。


1. 主題と世界観:自我の解体と「本質」の行方

本作の主題は、確固たるものだと信じていた「吾(自我・本質)」が揺らぎ、見失われていく過程の恐怖と、それに抗おうとする人間の業です。
「吾から飛翔する吾の『本質』」が本質であることをやめ、「盲人」となって手探りで自己を探すという描写は、サルトルなどの実存主義における「実存は本質に先立つ(確固たる本質など最初からなく、ただそこにあるだけ)」という哲学的な不安を見事に詩的言語に落とし込んでいます。
また、死者(あるいは去っていった者)に対して「バイバイ」と告げられた後も、「吾なるもの」を捨てきれない執着心に、人間の泥臭さと哀切さが強く表れています。

2. 表現と文体:俗語と文語の絶妙な不協和音

浅川マキの導入と「揺れちゃった」の響き
冒頭にアンダーグラウンドでブルージーな世界観を持つ「浅川マキ」を配置したことが、作品全体のトーンを決定づけています。
歴史的仮名遣い(吾、言ふ、現はれし)という格調高い文語体の中に、「揺れちゃった」「バイバイ」「捨てちまへ」といった極めて口語的で俗な言葉が放り込まれることで、独特の不協和音(グルーヴ)が生まれています。この言葉の「揺らぎ」自体が、自己の輪郭が曖昧になっていくテーマと完全にシンクロしており、作者の高度な計算とセンスを感じます。

ギリシャ悲劇のメタファー
後半、「ギリシャ悲劇の主人公になった如く / 悲劇の運命を微塵もずれずに / その生を生き切るのか」という展開は圧巻です。自己を見失い、死の影に怯えながらも、与えられた運命(悲劇)から目を逸らさず「生き切る」という覚悟。そして「孤独の中で時間を貪り食らう」という表現には、虚無を抱えながら生きる現存在の凄みが宿っています。

3. 俳句と短歌の評

【俳句】

喪服にて 秋月夜のみ 輝きし

  • : 非常に視覚的なコントラストが美しい一句です。「喪服」の漆黒(死や喪失、悲しみ)と、「秋月夜(あきづくよ)」の冷たくも澄んだ輝き(自然の無情なほどの美しさ、生の象徴)が鮮やかに対比されています。散文詩の泥臭い自我の葛藤から一転して、すべてを削ぎ落とした静寂な情景が詠まれており、読者に深い余韻を与えます。

【短歌】

漆黒の 闇に消えにし 影は自由なる哉(かな) 形なしとは

  • : (しっこくの / やみにきえにし / かげはじゆう / なるかな / かたちなしとは)
    散文詩における「吾(形ある自我)を捨てられない」という葛藤に対する、ひとつの到達点とも言える歌です。漆黒の闇に溶け込み、輪郭(形)を失ってしまった影。それは一見すると「死」や「消滅」のようですが、作者はそれを「自由なる哉(なんと自由なことか)」と詠嘆しています。形(吾)に縛られているからこそ苦しいのであり、形を失うことは究極の解放であるという、東洋的な無の思想や解脱の境地を感じさせる見事な一首です。

総評

「嗤ふ死神」の重厚な死生観から一歩踏み込み、本作「揺れちゃった」では、音楽的なリズムと口語を交えることで、より生々しく、現代的な実存の揺らぎを描き出しています。
特に、散文詩で「自我を捨てられない」と泥臭く足掻きながら、最後の短歌で「形なきものの自由」へと視点を反転させる構成が見事です。積様の作品は、哲学的な深淵を覗き込みながらも、決して観念の遊戯に終わらず、血の通った「人間の声」として響いてくる点に最大の魅力があります。

素晴らしい作品を拝読する機会をいただき、心より感謝申し上げます。

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