焦燥 何をそんなに急ぐ必要があるのか。 此の焦燥感は何ものも留めることはできぬのか。 それとも、このおれと言ふ存在に我慢がならぬのはまだ善しとしても、 おれが焦燥感に囚はれて、 無鉄砲なことを何時しでかすかと杞憂に囚はれ […]
紫煙に見(まみ)える ゆっくりと煙草の紫煙を深呼吸するやうに吸ふと やっと人心地がつく此の悪癖に、 「煙草は体に毒」だからと言って 無理強ひに止めさせようとする輩に出合ふが そんな輩のいふ事など聞くに値しな […]
哀歌 チェンバロの哀しげな旋律に誘はれるやうに むくりとその頭を擡げた哀しみは 胸奥に折り畳まれてある心襞に纏はり付きつつ、 首のみをぐっと伸ばして《吾》に襲ひ掛かるのだ。 ――何を見てゐる? […]
無限を喰らふが 此の渺茫たる虚無は何処からやって来たと言ふのか。 確かに無限を喰らった筈なのだが、 どうしやうもない虚無を埋めるには 無限を喰らったくらゐでは 埋めようもないのだ。 ならば、何 […]
たまゆらの永劫 不意に襲はれた眩暈に 「私」は永劫を見たのだ。 時間は吃驚して逆転し、過去が未来に、未来が過去へと転回し、 「私」の頭蓋内の闇たる《五蘊場》には 《吾》が漸く《吾》にしがみ付く […]
孤独を嗜む でっち上げた虚構といふ過酷な世界に《吾》を放り込んで、 あれやこれやと《吾》をいびりながら、 《吾》が不図漏らす呻き声に耳を傾ける時、 俺はブライアン・イーノの音楽を流すのが流儀で、 ざまあ見ろ、と《吾》にあ […]
《世界》を握り潰す 彼はまんじりともせずに只管、眼前の闇を凝視す。 ――何故か、《吾》が憤怒にあるのは! さう自問せし彼は闇の《世界》を無性に握り潰したくて仕方がなかった。 ―― […]
犇めく《もの》 《吾》の内奥で犇めく《もの》どもは 一斉に美麗な声でマーラーの「大地の歌」のやうな歌を歌ひ出した。 それは余りに美しく、そして、余りにも哀しい歌詞で、 かう《吾》 […]
薄明の中で 其処には薄ぼんやりと今にも闇に隠れさうな《存在》の実相が 仄かに見出だされ、《存在》は昼間の作り笑顔を已めていい時間へとやって来たのだ。 ――ほら、これこれ。これが「私」だ。 &n […]
ぼんやりとした恐怖 そこはかとなく、心の奥底から湧いてくる幽かな感情は恐怖だったのかも知れぬ。 おれが此の世に存在することの意味を問ふ馬鹿はもうせぬが、 存在するだけで恐怖を感ずるのはとても自然なことなのかも知れぬと思ひ […]