顫動(せんどう) かそけく羽ばたく蚊の羽音のやうに 時空は絶えず顫動し それに伴ひ俺を俺足らしめる時空も顫動する 嗚呼、其処に飛び立つのは何ものなのか。 さうしてかそけきは音を立 […]
天籟(てんらい) 何処で音が鳴ってゐるのか判然としない天籟が、 また、聞こえ出す。 吾独り畳に胡坐を舁き、 天籟が鳴る事で兆す猛嵐をぢっと待つのみ。 天籟は何時も嵐を呼び、 さうして吾の内部も […]
かそけき世界 この世界は 何とかそけきものなのだらう。 ――あっ、 と、何かを見つけても それが本当のものなのか 或ひは蜃気楼なのか 最早俺には区別が付かぬのだ。 さうして既にか […]
仄かなるもの それは一体何なのだらうか。 仄かにその気配だけが感じられる存在と言ったらいいのか、 何やら傍らにゐるに違ひないのだが、 それを「これだ」と名指せぬのだ。 名指せぬ故にそれを存在するものとして認 […]
頭痛に溺れる 脳の髄が拍動しているやうに じんじんと痛みを発する奇妙な頭痛に、 俺は溺れる。 何がさうさせると言ふのか。 俺に残された振舞ひは この脳の髄を痺れさせるやうな頭痛に […]
五蘊場に棲む者どもよ 頭蓋内の闇を「五蘊場」と名付けた俺は、 其処に棲む「異形の吾」どもに対して破れかぶれの戦ひを挑んで暫くするが、 それは敗退に敗退を重ね、 俺はもう五蘊場から追ひ出される寸前だ。 &nb […]
死の爆風 仮に生者が死の領域へと踏み出した時、 星が大爆発をして死んでゆくやうに 現存在もまた大爆発をして死するに違ひない。 そして、その爆風は死すべき現存在が 此の世に未完で終はってしまった事を託すべきも […]
晒し首 さて、晒し首の頭蓋内にも思念が宿ってゐるのかと言ふ問ひに対して 誰も判然と答へ得る事は不可能に違ひない。 しかし、この問ひは幽霊は歳を取るのか、と言ふ問ひとも関連してゐて、 私見では幽 […]
徐に そいつは徐に俺の頭蓋内の闇の中で立ち上がり、 ――ふはっはっはっ。 と哄笑を発したのである。 何がそんなにをかしかっのだらうか 俺にはとんと合点がゆかぬままに、 しかし、そいつは徐に歩き出し、 俺の頭 […]
邂逅 視界の縁できらりと輝くのは「死者達」の魂魄か それとも病んだ眼球の見せる幻覚なのか しかし、俺にとってそんな事はどうでもよく 唯、そこに気配を感じられればそれでよいのだ。 その光は絶えず […]