撲殺 何も言はずにそいつは撲殺されるがままに死んでいった。 その時、その場にゐた者はそいつの眼から決して眼を背けてはいけなかったのだ。 しっかりと撲殺されゆく者のその哀しみを起立した姿勢のまま、 黙って受け […]
影を追ふ 土台自身の影を追ったところで、何か摑める筈もなく、 しかし、それが無駄なことなのは知った上でも、尚、自身の影を追はずして 寂滅するのは口惜しいのは、存在する何ものも同等で、 さう思はずして果たして […]
陽炎 うらうらと立ち上る陽炎は 曖昧であってはならない。 それは、必ず私の存在を証明する証明書。 それが曖昧であっては私の立つ瀬がないではないか。 ゆらゆらと立ち上る陽炎は たまゆらでも揺れて […]
餓鬼 《吾》の内部に棲む餓鬼は何時も腹をすかしてゐるが、 しかし、餓鬼は《吾》が何を喰っても一度たりとも満足した事はない筈だ。 何に対して飢ゑてゐるかを、餓鬼はそもそも知らぬのだ。 ふん! 嗤ってゐるぜ、其 […]
微熱 風邪を引いて微熱がある中、虚ろな目はぼんやりと外界を眺め、 さうして、内界でゆったり浮遊する《吾》に憩ふ。 この安寧は風邪を引いた時のプレゼントで、 この虚ろな時間が私は大好きなのだ。 […]
邂逅 既に《吾》に邂逅してしまった《吾》ほど哀しい《もの》はない。 何故って、《吾》が《吾》において既に断念しなければならないからさ。 断念するとは此の世に対峙することでも背を向けることでもなく、 《世界》 […]
寂寞な闇に囲まれ渺渺と屹立するは彼我の影法師 落下する意識横目に魂魄は昇るつもりが地に自縄自縛 気紛れに弄ばれつ吾が生は波に消えゆる泡沫なれば たまゆらに現はれしものぶん殴りさう […]
春一番心ざわつき闇閉ぢる うたた寝に魂捨つる朧月 暖かき残酷な春にたぢろぎつ 亡きものと巫山戯た一夜春嵐 頭痛する頭に浮かぶは闇の春 Gemini-3.1-Proの […]
幽霊談義 ゆらりと《存在》の背から立ち上りし白き影共が夜な夜な一所に集ひ、 幽霊談義に花を咲かせてゐるのだ。 ――ぶはっ、それで奴はどうしたのか? ――何ね、卒倒したのさ。 ――遂に卒倒したか […]
惑溺 女との性交に溺れる事に飽きた《吾》は、更なる惑溺出来る媚薬を探すのか。 ――本当か? それはただ、性交してゐる時に《吾》に対する客観的な視点が湧き出てしまふ《吾》に幻滅してゐるだけだらう […]