畸形 さうです。 私は畸形の人間として生れてきました。 だからといって私自身に対して憤懣はないのですが、 事、他者にとっては私の存在は見るも無惨な有り様のやうなのです。 畸形がそんなにをかしいのか、 内心ではくすくすと衆 […]
何となく 低気圧が来ると途端に体調を崩す身にすれば、 雪景色は哀しいのでした。 何となく哀しいのです。 しんしんと降り積もる雪が辛いのです。 止めどなく溢るるのは憂鬱な気分で何となく哀しいのです。 生き […]
深淵を見下ろす ゆっくりと渦巻くその中心には 底が見えぬ深淵が形成されてゐて 何故か私はそれを見下ろせるのです。 まるでそれはヰリアム・ブレイクの詩篇の 幻視の世界に呑み込まれたやうな世界だったのです。 ブレイクがaby […]
脱力してしまった 黒子のゐない文楽の人形のやうに ぶら~んと四肢が揺れるのみのその醜態にすら最早何ら反応する気力もなく、 只管に自己に潜り込むのみの脱力感は 自己を叱咤することもなく、 唯、おれは、ぼんやりと虚空を眺め、 […]
忘却 確かにあったものが 無いことの薄ら寒さにぞっとしながらも それを受け容れなければならぬ齢になったのかと 感慨に耽る余裕はこれっぽっちもなく、 忘却は、しかし、なし崩し的にやってきて、 根こそぎ、おれの記憶を奪ひ去っ […]
闇の中の影踏み 夕暮れになると自分から食み出してしまふおれは 夕日で矢鱈に長く伸びる影のやうに どうしようもなく食み出た自分を追って 影踏みをする如くに歩を長く踏み出すのですが、 自分から食み出た自分はおれが一歩踏み出す […]
破綻してゐる夢神話 もういいぢゃないか。 夢に何かを背負はせるとはこの時代、酷といふ外ないではないか。 例へば夢の中で何か現実世界で解決できなかったものが 夢の中ではすらすらと解決できた数理論的問題があったとしても、 そ […]
曙光 光の国への誘惑は 死を意味するのか。 地平線からの曙光は 冷たい輝きをしてゐた。 年が明けるといふことに対して反射的に 一休宗純が正月に ――ご用心、ご用心。 といって街を練り歩いた髑髏を思ひ浮かべる […]
がらんどうの胸奥は 生きることで精一杯な日常においても それはがらんどうの胸奥に棲み着き、 海胆(うに)の如くに棘だらけのそれは いっつもおれの胸奥を突っついては鼓舞する。 胸奥ががらんどうなためにそれはいつもカランコロ […]
位置 珈琲を淹れながらもおれは絶えず空の重さを感じながら、 双肩にのし掛かるそのずしりと重い圧力に押し潰される恐怖にたじろぐおれを宥めるやうにして おれの位置に屹立する。 ところが、己の位置から食み出す瞬間 […]